先生と僕

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「広瀬さん、こっちは終わったよ」

「ほんと?森戸くん早いね」

「残りもう少しだね。僕も手伝うよ」

「ありがとう!」


文化祭の前日、文化祭実行委員に選ばれてしまった僕は慌ただしい毎日を過ごしていた
でももう本番は明日だしがんばらなくちゃ
…会いたいなぁ


「森戸くん、終わったよ」

「わっ、びっくりした」

「ぼーっとしてたね。疲れちゃった?」

「ううん、大丈夫」


同じ文化祭実行委員の広瀬さんは、気が利いて、しっかりしてるし、一緒になるのが広瀬さんで良かったなぁ
学年のマドンナと呼ばれてる広瀬さんが隣りに居ると視線が突き刺さるけど…


「文化祭、成功するといいね」

「成功するよ。広瀬さん、がんばってたもん」

「森戸くんだって頑張ってたじゃん」

「そ、そうかな」

「そうだよ。さ、クラスに戻って手伝わないと!」

「わっ、待って…!」

「ほら、森戸くん早く」


急かされるように握られた左手をそのままに広瀬さんの背中を追いかける

「きゃっ!」
「ぶっ…!いてて」

「こら!廊下は走らないの!」

「つ、嗣永先生…!」


急に止まった広瀬さんの背中にぶつかって、顔を上げると嗣永先生が怖い顔をして立っていた

「危ないから廊下は歩く!わかった?」

「はい、すいません」

ちらりと視線を落とした嗣永先生は、そのまま歩いて行ってしまった

何を見たんだろう
そう思って、先生が見た方向を見ると、しっかり握られた僕と広瀬さんの手


「っ…広瀬さん、僕ちょっと用事思い出したから先に行ってて!」

「え?森戸くん?」

「すぐ戻るから!」


急いで嗣永先生の後を追いかけると、角を曲がった先に見つけた小さな背中

「嗣永先生…!」

「森戸くん。どうしたの?」

「あの、さっきのは違くて」

「さっきの?」

「広瀬さんとは実行委員で、だから、」

「あぁ。急いでても廊下は走っちゃダメだよ?」

「あの…」

「がんばってね。先生急ぐから」

「…嗣永先生」


嗣永先生はそのまま僕を追いて行ってしまった
いつもは僕の話を最後まで聞いてくれるのに

「あとでメールしてみよ…」

結局僕は、忙しくてメールを送るのを忘れてしまった
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