IF五部

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「うぉあっ―――っと」


突然宙に放り出された。

慌てて風を使って、地面ギリギリで浮かぶ。

・・・っぶねえ・・・!

風を解除して、地面に足を着ける。

自分が無事なことに安堵の息を吐く。

ふと視界について気になることがあった。


「夜・・・?」


辺りが暗い。

げ、まじ?夜かー・・・うん。

どうしようか、と腕を組む。

それに、ここらへんあんま建物ないなあ。

ところどころに建ってるって感じ。


[主、30m程後ろから人が来てます]


八卦と通信を繋げた途端、炎舞に注意するよう言われる。

―――人? 男?女?


[男だな。この空気の切り方だとそれなりにガタイはある。
180cmは確実にあるな]


今度は風真が話す。

男の人か・・・ふむ。

―――敵だと思う?味方だと思う?


[知るか。話さなきゃわかんねえ]

[現段階では何とも言えません]

ですよねー。

ただの一般人って可能性もあるしねえ。

・・・ただし、主要人物が関係してくる、な。

んーでも、この世界来てからだと
必ず最初は主要人物に会ってんだよな。

最初はジョセフ、次は・・・ジョセフ、次は承太郎。


[お前そんな呑気なこと考えてて良いのか
 ここ、隠れるような場所ないんだろ?]


間。


先程、自分が見た景色をもう一度見る。

・・・うん、


―――なんかあったときは迷わず走る。


[何悟り開いたみてえに言ってんだあほ]

[主、もう近いですよ]


"近い"っつっても、背後はさっきから注意はしてるけど・・・

―――あれ?

近いはずなのに、足音なかったぞ?

え、そーいう人?

何、忍者?

足音を消すようなお仕事の人なの?

まさしく、背筋が凍ると言うような感覚がして、後ろを振り返る。


・・・あれ?いない・・・?


[主、何をなさってるんですか!?後ろですよ!?]


んなこと言ったって・・・

ポケットの中の八卦を握る。


「その後ろに誰もいね、・・・え?」


目を丸くする。

今、人がこの夜道から現れたように見えた。

一瞬だったから気のせいかもしれない。

この男の人の格好が黒だから、
夜に溶け込んでそう見えたのかもしれない。

・・・今ならザ・ワールド使われたポルの気持ちがわかるよ。


「―――貴様、何者だ」


背が高い。

顔立ちは外人さんだな。


「何者・・・と、言うと・・・?」

「正直に話せ。
お前のその目は、何か探っているように見える」


うっわー、観察力高い人かー。
この世界のそーいう奴ら、ちょっとめんどくさいんだよな。


「・・・"正直"って言うと、何を話せば良いんですか。
私は気付いたらここにいたんです」


さっきまで日本にいたんです、と思ったところで、
ここって外国?という疑問が浮かんだ。

またいつの間にか、便利な翻訳機能動いてたのか。


「・・・それを、事実だと言い張るのか」

「本当のことですから」


まあ嘘ではない、ってレベルだ。

気付けばトリップさせられてるし。

さっきまで私は杜王町にいました。

それに探ってるって、
そりゃ知らん人に"お前何者"って言われりゃ
なんだこいつ、ってなんだろ。

「なら、それを信じよう」


え、


「来い」

「・・・へ?」


ずいぶんと間抜けな声を出してしまったと、口に手を当てる。

んなあっさり・・・何考えてんだ・・・?


「住む場所を提供する。身寄りがないのだろう」


だからって住まわせるか?という考えが浮かんだが、
変に問答を交わすと疑心を増やしかねないし、
何より私に家がないのは事実だ。

きっとこの人にとっての今の私は、電波だ。

そうに違いない。

返事をするために、口に当てた手を外す。


「あ・・・ありがとう、ございます」

住む場所は確保。

・・・というか、一体全体この人は何者なんだ・・・?

承太郎タイプだろうか。


「名前は何だ?
 オレは―――・・・リゾットだ」

美味しそうな名前だ。



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