IF五部

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夜空に爛々と、星が輝くころ


「お前か、例の女ってーのは」


チンピラ―――・・・じゃない、リゾットさんの知り合い2人と対面した。

眼鏡と坊主。

目を合わせられるはずがない。


「時間がねえな。行くぞ」


坊主の人がそう言って歩き出す。

え、行くって何で―――


「何ボサッとしてんだよ。乗れよ」


眼鏡の人がこっちを、目を細めて見てくる。

変な髪型―――・・・て言うと怒られるだろうからやめよう。

てかめっちゃ睨まれてる。敵意全開。

・・・泣いていいだろうか。

この人らがどーいう人かわかってないし、
コミュ障万歳の自分には何も言えずに、ただ指示に従い、車に乗る。

7人乗りのワゴン車。

運転席には坊主の人。助手席に眼鏡の人。

そしてその後ろに私が座る。

膝を抱えたい気分だけど行儀悪いからやめとく。人の車だしね。

そして車は動き出す。


「・・・おいホルマジオよォ〜もっとスピード出せねえのかこれ」

「バカ言うな。オレたちがターゲット見つける前にサツに見つかんだろが」

「限界速度まで出しゃ逃げ切れんだろ、アイツらなんかよォ〜」


"ターゲット"とか"サツ"とか言ってるんですが。

どーいうことですか。

そーいう言葉使うってことは、この人らそーいう怖い人たちなんですか、そーなんですか。

・・・まあ、それに近い人といたことはあるから何とも言えんが。

・・・にしても、坊主の人はホルマジオっつーのか?

・・・どうしてお互いの名前を知らずにこの車は進んでいるのだろうか。

胃が重たくなってきたよ。

―――ん?

眼鏡の人と目が合った。

・・・にしても髪くるんくるんだな、この人。


「おら、これ」


封筒を差し出される。

一瞬何だ、と思ったが反射的に手がそれを受け取る。


「写真の方、よく見とけよ」


封筒の中を開ける。

中には2枚、紙が入っていた。

・・・写真、と。中から取り出す。

黒髪の、外人さん。

モデルというより、俳優さんみたいな顔。

つまりかっこいい系の人。

もう1枚の紙を見ようと、封筒に手を掛けようとすると、


「もう1枚の方はその写真の奴を見つけてから見ろ。絶対にだ」


念押しされた。

なんだ、どーして見つけたあとなんだ?

というかこの言い方、振りに聞こえた自分は末期だろうか。

まあ不思議に思ったところで従うしかないので、写真だけを出して、封筒を腰に着けてるカバンに仕舞う。


「他に、聞きたいことはねえか?」


この空気と、よくわかっていない相手に、口を閉じたままでいたいのが本心だが・・・


「・・・どうして、この人を探すんですか」


やばい、久しぶりに声出したから、声ガスガスだ。

しかもガタガタ。緊張しすぎわろた。


「・・・そいつは、オレたちにとって不利益なものを世の中に回してんだ」


坊主の人が答えてくれた。

・・・"不利益"・・・?


「―――麻薬だ」


危うく車のドアに手を掛けるとこだった。

・・・一体私はどこへ向かっているんだろうか。

頭を抱えたくなった。

・・・ここに来ての、真っ白い粉かあ・・・!きっついなあ・・・!!


「・・・その人を、見つければいいんですね」

「ああ、そうだ。見つけりゃあな」


坊主の人の言い方に、含みを感じた。

え、何されんの?

私そのターゲットさんと一緒にどっかに片づけられんの?

不安だらけのお仕事から気を逸らすため、車の外を見る。

・・・まっすぐ、向かってるっつーことは、
ターゲットがどこにいるか目星はついてんだよなあ。

・・・じゃあ、この2人で済むんじゃないのか?

私いるの?

リゾットさんが、女性しか出来ないことがある、とかなんとか言ってたけど・・・

この奇妙世界てことはこの2人もスタンド使いだよな。

・・・そーいう人達に"女性しか"とかあんま関係な気が・・・

ほら、ごり押しで。




さて、そこから約1時間弱。街中に入った。

そしてある場所で車が止まる。


「ここだ」


車を降りる。うん、外の空気だ。うん、帰りたい。

2人が路地裏の中に入ってく。

・・・私も、結構いろんな世界行って、いろんなことやってきたけど、
今までで一番怪しいことやってるよなあ、絶対。

くじけそう。

2人が足を止めたので、私も止める。

左側に扉がある。

―――?

不意に、上の方から違和感を感じ、顔を上げる。


「あ」


手元の写真を見る。

今、建物の窓からこっちを見てた人物と写真の男が、同一人物に見えた。

2人が訝しげにこっちを見る。そんな目で見るな。

私は建物を指差す。


「この中に、写真の男、が・・・!」


2人はお互いに顔を合わせて、悪そうな笑みを口元に浮かべる。

そして頷き合ってから、


「行くぞ」



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