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□泣き虫になりたかった
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涙を流せれば、全てを忘れられる気がして。

でも、どうしても泣き虫になれなかった。






き虫になりたかった






huzigaya side






素直になれなかった。

君の前では泣けなかった。



好きじゃないふりをしてても、結局俺は――・・






行為後の少しの優しさが、君を嫌いにさせてくれない。



そっと頭を撫でられる感覚に、ふと目が覚めた。

薄目を開けると、君が俺の頭を撫でていて。

そんな愛おしそうに俺を見ないでよ。


行為は、いつも俺様で無理矢理で、半ば強姦だろ、ってくらいの時もあったのに。

そんな顔で俺を見ているのを知ってるから、こっちまで切なくなるんだ。




――俺と北山は、俗に言うセフ レって関係で。

スキャンダルを考えて、一番近くにいるやつと。


最初は、北山のことなんかどうとも思ってなかった。

ただ、酷い抱き方をするやつ。


・・・だったのに。




行為後に、必ず優しく俺の頭を撫でる北山に気付いてから、違う感情が生まれて。

胸の鼓動が煩くて、もっと触れて欲しいなんて思っている自分がいた。


―その感情の正体には気付いたけれど。



そんなこと、駄目だ。

仮に北山もそうだとしても、みんなに迷惑が掛かる。



俺は、自分の思いに自分で終わりを告げた。





プルルルル・・




不意に携帯が鳴る。

勿論着信は、




「・・・北山、」




俺たちは、所詮それ以上の関係になんてなれない。

そんなの知っていた。


それでも一粒だけ、涙が溢れた―――・・






―――君の前で"好きだ"と泣けたら、君も頷いてくれただろうか。

俺も好きだと笑ってくれただろうか。



弱虫なんだ、俺は。


傷つくのが怖くて泣くことさえ出来ない。





切なさは、止まることを知らずに――――・・。











(泣き虫になりたかった、)(君に抱き締めて欲しかった)











未練たらたらな藤ヶ谷さん萌え←

つくづく泣かせるのが好きなようです(^q^)


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