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□感情カタストロフィー
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ああ、君なんて大嫌い。
結局そうやって君に堕ちてしまうから。
感情カタストロフィー
huzigaya side
それは恋と呼ぶのだろう。
だけど認めてしまったら、それこそ俺は。
――朝。
気怠い身体を仕方なしに起こし、痛む腰をさすりながら隣にある体温の持ち主を見る。
気持ちよさそうに寝ていることがなんだか恨めしい。
第一、お前が激しいからこんなにも腰が痛いんだ!
まあ、そんなこと言わないけど。
そっと顔をのぞき込めば、まるで子供みたいな寝顔。
―はあ。
盛大に洩れたため息。
セ フレ、とか。
そんな関係の俺たち。
なのになんでこんな感情なんか。
・・・満たされればそれでよかったはずなのに。
身体の関係なしに、もっと触れて欲しいとか思う自分がいて。
そう思ってしまう自分にイライラする。
「ん、・・・ふじ、がや」
「・・・!?」
自分の名前を呼ばれて、思わずビクッと震えた。
うわ、なんでいちいちこいつに反応しなきゃならないんだよ・・・
胸が高鳴ってしまう自分がどうしようもなく憎らしい。
「・・・北山の、ばーか。
大嫌い。大っ嫌い」
"でも、好きだよ、"
矛盾してるなんて、知ってる。
というか、素直になれないだけ、って言われたらそうなんだけど。
ああ、今色々考えてたら感情が交錯して頭がごちゃごちゃになる。
「―ほんっと大嫌い。でも、なのに、大好き、」
北山が寝ているのを良いことに、思ってることが言葉に出した。
「なんだよ、それ」
不意に聞こえた北山の声。
え、なに。
まさか。
「・・・起きてたよ、」
「―・・っな」
こいつ、なんで、どうして。
自分の言った言葉に後悔が押し寄せる。
―北山は黙り込む俺を見て不敵ににやりと笑った。
やっぱり、聞いてやがる・・・!
「なあ、藤ヶ谷」
「・・・なに」
ああ、もう最悪。
大嫌いとか、・・大好きとか。
色々言っちゃってるし、なんか本当最悪。
北山は俺を一度見てから、そっと近づいた。
反射的に後ずさりしたけど、後ろは壁。
ドンッとぶつかるのと同時に唇を奪われた。
濃厚なキスに酔わされて呆然としていると、北山はそっと俺の頬に触れる。
「俺は、藤ヶ谷のこと、―好きだから」
どくんっ
跳ねる鼓動が煩い。
ほら、やっぱり俺は君のことが。
でもそんなのは解ってるけど、なんだか認めるのが悔しくて。
色々な感情が混ざり合って言葉が出ない。
だから、そのまま自分の行動に身を任せた。
二人の距離が、また近づく。
ちゅ、
短く音を立てて触れた唇の意味に、どうか気付いて。
(カタストロフィーな感情)(触れた微熱は甘い、)