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□甘美酔い
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君に騙されてあげようか。
甘美酔い
ino side
「ねえ、慧」
行為後の独特の甘ったるい香りにむせかえる。
静かな部屋に響く、君の甘い声。
「大ちゃん、どうしたの?」
「・・・大貴って呼んでよ。気持ち悪い」
気持ち悪いって酷いなあ。
・・・ー俺と大貴は、身体だけの関係ってやつ。
大貴には好きな人がいて、でもどうやら叶わない恋のようで。
最初はちょっとからかうくらいの気持ちで"俺じゃ駄目?"なんて言っていたけど、まあ、本気になっちゃったってパターン。
でも、未だに好きでいるらしいけど。
大貴の好きな人は、誰か解ってる。
ーメンバーだなんて、そりゃ叶わないよな。
しかもラブラブな恋人が居るし。
あえて名前は言わないけどね。
俺はふと窓側を向いた大貴を無理矢理こちらに向かせ、キスをする。
「・・・なに?」
「フレンチキスじゃ物足りなかった?」
「ほんとうざい・・・」
そんなことを言いながら顔は嫌そうじゃないけど。
ああ、俺、本気だなあ。
君のそんな姿さえ愛おしいなんて。
「慧」
「ん?」
今度は大貴に呼ばれて振り返ればちゅ、とフレンチキス。
「どうしたの?大貴からなんて珍しい」
「・・・気紛れ」
そんなことを言いつつ、少し恥ずかしかったのか顔がほんのり赤い。
そんな顔見せられて期待するななんて、無理な話だ、ね。
身体だけの関係。
それに縋るつもりもない。
絶対に君が欲しいから。
でもこんな曖昧な関係に酔わされて、もう少しだけこのままで居たい、・・・なんてね。
((今だけ、もう少し甘美酔い))