BOOK

□籠の鳥は空を恋う
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どうか、俺を連れ出して。






籠の鳥は空を







arioka side





貧富の差が激しいこの時代。

俺はこの伯爵家に生まれた。



俺には兄がいるけど、俺はあまり好かれてない。


その理由は、・・・俺が父親の愛人の息子だから。



父親ー・・・伯爵は妻がいるのにも関わらず、この家でメイドをしていた母親を愛した。

最初は秘めた恋だったようだけど、母親が俺を生んで、俺を跡取りにするとまで言い出して。


幼かった頃、散々嫌と言うほど「愛人の息子」だと言われたっけな。

そこでせめてこれ以上嫌われないようにするために、作り笑顔も学んだっけ。



母親は、俺を生んでからすぐ、亡くなった。


もともと身体が弱く、体調が回復しないままに天国に旅立ったらしい。



結局、跡取りは兄になり、ある意味俺は自由に暮らしていた。

伯爵は愛した女の息子だからか、なんでもしてくれた。


欲しくなどないというのに、婚約者まで決めて。



婚約者の女性は、俺より二つ年下の、可愛らしい感じのひと。

彼女が嫌いというわけではないけどー・・・




三年前、家に来た男。


名前は、・・・伊野尾慧。

整った顔をした男で、かなり頭がいいと聞いたことがある。


そいつは父親に当時学業に励んでいた俺の家庭教師として、勉強を教えてくれた。



どんなやつかと思ったが、実際はかなりテキトーで話しかけやすい男だった。

二人でいる時間は、今まで誰といるよりも楽しくて。



知らず知らずのうちに、ー恋をしていた。



ああ、馬鹿だな、俺。

叶うはずなんか、ない。



そう思いながらも、高鳴りは止まってくれなかった。

今までの作り笑顔も、本当に変わっていって。




でも、つい最近になって。

彼が、ー今までのこと、話してくれて。



"あのね、俺ー・・・"



慧の仲間が、俺の父親に殺されたって。

とても遠回しに、解らないように言ってたみたいだけど、解ってしまった。


もう、この恋は叶わないな。

少し自嘲になって、俺のことを全部話した。


愛人の息子だということも、何もかも全部。


勿論、そんなに暗くならないように、少しだけ声のトーンを上げて。




それ以来、二人ともその話はまったく話題に出さずにいるけど、色々思うところがあったかな、なんて思う。

あと、慧が俺に自分から自分自身のことを話してくれたのは初めてだったから、


・・・ちょっと、期待しちゃってたり。



あー、もう。

諦めの悪い男だな、なんて思う。





ー・・・でも、大丈夫。

もうすぐ、諦めがつく。



俺は、慧に話してないことがある。


きっと直接伝えてしまったら、自分で否定してしまうような気がして。




・・・もうすぐ、結婚すること。



伯爵はこの家の人間が俺をよく思ってないのを解っているから、家から引き離そうとしている。

それは、父親としての優しさのつもりなんだろうけど・・・




もう、慧には会えなくなる。


だけど、それに逆らうつもりはないし、まず逆らえるわけないし。




ー俺は自分にそう言い聞かせながらも、本当は全部から逃げ出したかった。


結婚からも、事実からも。





誰か俺をどこか遠くに、連れて行って。


・・・慧。














(("誰か"なんて、あの人に決まっているのに))

(鳥は空を恋うた)












これ、終わるかな(^q^)
今はそれが心配です←

このお話以外と人気みたいで嬉しいです!

あとは伯爵と伊野ちゃんの因果と、大ちゃんの結婚問題・・・

もう諦めそう((爆

でもまあ、完結までは頑張ります!!


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