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□ぜんぶ君だった
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俺の隣は君じゃなきゃ駄目だから。

君より欲しいものなんて、ない。






ぜんぶ君だった






ino side





俺には、誰より愛しいひとがいる。

それはー・・・




「慧様、お帰りなさいませ」



大学から帰ってきて迎えてくれる、君の笑顔。

少し不器用なところや、他の使用人とは違い、俺に屈託のない笑顔を見せてくれるところに惚れた。


それは、昔から一緒に居たからかもしれないけど。

それでも何より大切に思えた。




「大貴、」


そう名前を呼ぶと嬉しそうな顔になるところも可愛い。



「どうしたんですか?」


大貴はニコニコと笑顔で俺のもとへ駆け寄ってくる。


ぷに。


効果音を付けるとしたらそんな感じ。

大貴のほっぺを触る。




「・・・へ?」


「ー可愛いなあ、もう」



不意にこぼれた言葉。

どうやらそれは大貴の耳に届いたらしくえ、え?と困惑する。


頬が赤いのは、気のせいかな。


俺と大貴は幼馴染みで。

昔は"慧"って呼び捨てだったけど、今は様付け。


普通の使用人だったら当たり前なんだけど、大貴のことは幼い頃から親もよく知っているし、そのままの呼び方でいいのに。


様付けって、ーなんだか疎遠されてる気がして、嫌だった。





「ねえ、今度から前みたいに呼んでよ」


そう言うと、"いえ、そんなわけには"って畏まる。



ー・・・様付けされ始めたのって、いつだっけ。

ふと思い出す。


あれは、確かー・・・



婚約者が出来たとき。



婚約者って言っても、見かけだけのものだし、実際は誰と結婚しても構わない。

俺の婚約者になったひとも好きな男性が居て、俺と結婚する気はないみたいだけど。


そのひと・・・というか女性は勘が鋭いらしく、俺が大貴を好きなのなんて簡単にばれた。

それでちょっと話したりはするけどー・・・




ああ、俺。

きっと期待してる。


もしかしたら君は俺が好きで、でも身分とか婚約者とか色々考えて諦めようとしているんじゃないか、って。



そんな考えは、様付けされた時からあったけど。

その期待を更に高めるように、君はいちいち俺の言葉に反応して。




俺は堪えきれなくなって、想いが今にも溢れ出しそうで、それがついに言葉に出てしまう。






「大貴、」


「はい?」




「っ、ー・・・好きだよ」




君から視線を逸らさずに、君が逸らせないように。

じっと、君を見つめた。


言葉が、溢れたー・・・




「え、っと、その・・・ご冗談を」



そう言って笑う君は、上手く笑えてない。

とても動揺しているような、震えてるようなそんな表情。


俺は、君の想いを、言葉を聞きたくて。




「冗談なんかじゃないよ。ー大貴は。

大貴は、俺のことー・・・」



"好き?"。

そう尋ねると、瞬間大貴がその場に崩れ落ちる。




「うそ、だって、慧は・・・っ!
俺は使用人だし、男だし、そんなのっ」



俺は大貴の言葉を塞ぐように唇を重ねた。

濡れている頬を、指で拭う。




「嘘じゃない。例え大貴が男でも使用人でも、

ー好きなんだ」



意地っ張りな君に届くように。

そんな想いを馳せながら伝わるようにと抱き締めた。


ぽつり、ぽつり。

大貴が言葉を発する。




「・・・婚約者が、いて。身分も違って。
でも、俺だって、

慧のことがずっと好きで・・・っ」



ぽろぽろと涙を流す君は、まるであの頃のように無邪気で素直で。




「・・"慧"って、昔みたいに呼んでくれて嬉しかった」


そう言って笑い、大貴の頭を撫でる。



「ー好きだって、やっと聞けた。

俺も、ずっと好きだったよ。・・・今も」





結局、今も昔も。

俺の隣には必ず君が居て。



俺の大事なものは、


ー・・・ぜんぶ君だった。



それは、今も、これからもきっと変わらない。





「大貴。ーもう、離さないから」


そう言えば、泣きやんだ君がこくんと頷く。




「ー・・・うん、」





拝啓、大好きな君へ。


俺のすべて、君にあげるから。

君のすべても、




俺に下さいー・・・













(ぜんぶ君だった。)(それはこれからも変わらない、)













えっと、あかり様のリクエストで"望んだら消えてしまうから"の続きになります。

無理矢理感満載ですいませんm(_ _)m

このあとはきっとどうにか幸せになれるはず((爆
きっと伊野ちゃんのお父さんとかも「YOU達、いいんじゃない?」的な←


色々適当で本当すいません(T_T)

あかり様、リクエストありがとうございました!


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