BOOK2

□微熱エレジー
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愛しい、愛しいと泣きながら、

結局君を傷つけるだけ。













arok side






それしか自分の思いから逃れる術を知らなかった。

弱かったんだ。

だから――・・君の優しさに、溺れた。






「あっ、ぁあ・・・っぁん」



甘い嬌声が閉じられた空間に響き渡る。

―それが、俺の声だなんて。


きっと誰も気付かないだろう。



そんな俺を抱いているのは、―・・・





「大、ちゃん・・っ」


「あっ、あっ、伊野ちゃっ」



別に、抵抗なんてしない。

って言うか、寧ろ俺から誘ったんだし。

―あの子を、忘れるために。


ちゅ、ちゅっ、と身体中に散りばめられる無数のキスマーク。

あいつは、こんな感じだったのかな、なんて不意に思ってしまう。


けれど伊野ちゃんに挿れられて、そんなことなんか一気に忘れて快楽に溺れた。




「ああぁっ、あっ、伊野ちゃんっ・・・好きっ」



そう声を上げれば伊野ちゃんの目は一瞬大きく見開かれて、少し動揺しているようにも見えた。

それから行為は激しくなって、あっという間にイってしまう。




「俺も、好きだよ・・・っ」



囁かれたその声は、俺の耳にはっきりと届いて、こくんと頷いた。

でも甘い痺れと快感を抱えたまま、俺は気絶してしまって。






――ふと目覚めると、伊野ちゃんが俺の髪を撫でていた。

今起きちゃ行けない気がして、すぐに目を瞑る。




「・・・大ちゃん、」


「―・・・っ」



びっくりするくらい優しい声。

薄目で伊野ちゃんを見れば、愛おしそうに俺を見ていて。


チクリ。

罪悪感に胸が痛んだ。



嘘吐きなんだ、俺は。

"好き"なんて虚言。

抱かれたのだって、伊野ちゃんならあの子を忘れさしてくれそうだから。


自分で、解っていてそうしたことなのに。

今更殴られた頬が痛い、とはこういうことか。



ポロッと雫がシーツに落ちた。

たった一粒の涙は君に気付かれることはなく。






――なんで、わざわざ伊野ちゃんのところに。

・・・なんて。

それこそ気付けなかった。


あの子に振られた寂しさより、君を傷つけている罪悪感が勝っていたことに。










(そうやって"本当の想い"さえ気付けずに、)(脆く崩れるのは触れたはずの微熱)










要するに[あの子→←有]だったのに、いつのまにか[伊→←有]になって。

だけど気付けずに"あの子"と付き合っていたけど振られて、
なんとなくあった虚無感を埋めるために好きだと築かないまま抱かれた・・・

と言うすれ違いです(^q^)


まあ、解釈は自由なのでお好きにどうぞ!


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