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□それくらいで終わる恋だった
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所詮、それだけの事。






それくらいで終わるだった






arok side





「大ちゃん、別れよう」



唐突な言葉に、びっくりしたのは俺の方。

冗談はやめてよ、なんて言おうとしたけど、伊野ちゃんの目が真剣で声が出てこなかった。


――本気、なんだ。

ずっと一緒に居て、ずっと恋していたから解る。

それが、余計虚しく感じた。



伊野ちゃんは無言を埋めるかのように俺を抱き締めた。

そっと、壊れ物を扱うかのように。




「・・・うん」



頷く、つもりじゃなかったのに。

凄く悲しそうな顔をしているから、思わず。




"ごめんね、"そう言いながら泣きそうな顔をする伊野ちゃん。

不思議と悲しいとか別れたくないとか、そんな感情は出てこなかった。


あれ、あんなに好きだったはずなのに。

俺を残して、殺風景な空間から居なくなった伊野ちゃん。


俺はただ、その背中を見つめていた―・・





――あれから、数日。

薮くんの隣を歩く伊野ちゃんを見かけた。


でも、なんとも思わない。


ただ、少し。

ほんのちょっと胸が痛むだけ。


幸せそうに笑う伊野ちゃんに、少しイライラしてるだけ―・・





俺は、本当に伊野ちゃんのこと好きだったのかな?

いや、・・・好きだったんだろうな、確かに。


でもそれは、そのくらいで諦められる想いだった、ってだけ。



俺は伊野ちゃんから視線を外し、空を見た。

雲がかかった灰色の空。

小雨が肌を濡らす。




所詮、それくらいの愛だった。

それだけで終わる恋だった。


君の存在は、それくらいでしかなかったから。




俺は、――雨とは違う少し生温かいものが頬を流れたことを、知らないふりをした。





「・・・今でも、好きだよ」











(それくらいで終わる恋、なんて言いながら)(終われなかった想いを隠してる)










薮伊←有が好きだったりもする(^q^)

とにかく薮伊有が絡んでいればそれで満足←


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