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□君色打ち上げ花火
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一瞬で消えてしまう盛大な美しさ。

俺はそれより、ずっと続く愛しさを信じているよ。













ino side






そうやってキラキラと輝き続ける君と、一瞬で思い出になってしまう花火を照らし合わせて。






「伊野ちゃん、早く早くっ!」


「解ってるよ、大ちゃん」



今日は俗に言う夏祭り。

俺たち二人はそのことを知らなくて、レッスン場の先生から聞いた。


いいなあ、なんて言う大ちゃんに"花火なら近くで見れるよ"なんて言う先生。



俺だって大ちゃんと一緒に居たいからついていってるんだけど・・・




「大ちゃん、はしゃぎすぎ」



お祭りにいくわけでもないのに、なんて言えば、きょとんとする。

あ、やばい。思ったことをそのまま言葉に出してしまい、後悔した。




「んー、だって伊野ちゃんと一緒に居れるんだもん」


なんて言う君にドキッとすることは必然。

ぎゅ、と抱き締めれば暑いよーなんて言いながら大ちゃんも俺の腕をぎゅっと抱き締めた。




「あ、伊野ちゃん、花火!」


大ちゃんがそう言うと、音を立てて上がる花火。

雲一つ無く、星が煌めく夜空に花火が咲いてるようで。


綺麗だな、なんて思う。


こうやって改めて見る事って、最近はなくて。

それにー・・・


君が隣にいるから、余計に綺麗に感じてしまうのかな。



そんなことを思いながら感傷に浸っていると、大ちゃんが俺の手をそっと握りしめ話しかけてくる。




「ねえ、伊野ちゃん」


「何?」


「ーずっと、一緒に居てね」



そう言って俺の背中に抱きつく大ちゃん。

感じる温もりが、愛おしい。




「どうしたの?急に」


「花火ってさ、綺麗だけどすぐ消えちゃうでしょ?・・・だから、その、」



"伊野ちゃんもいつか俺の隣から居なくなっちゃうんじゃないかと思って"。

そう言いながら照れ笑いする大ちゃん。


いつも笑顔で、悩みなんてなさそうに見えるけど、そうやって俺のことを考えてくれてたんだ、って思うと余計に嬉しくなる。



俺は後ろに振り向き大ちゃんの唇に自分の唇をそっと重ね合わせた。




「居なくなるわけないでしょ」


そう言えば、"ーうんっ"と微笑む大ちゃん。




「大ちゃんこそ、居なくなんないでよ?」


「勿論っ、だって伊野ちゃんが大好きだもん!」



そうやって笑う君が愛おしくて堪らない。

俺は、大ちゃんに近づいて耳元でこう囁いた。




「俺だって、ー大好きだよ」












(打ち上げ花火より隣の君)(だってずっと隣に居てくれるでしょ?)


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