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□君が必要としてくれるなら
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それだけで俺は十分なんです、







君が必要としてくれるなら







ymd side






突然襲ってくる、虚無感。

どうしようもなく、ただ。


自堕落に浸って堕ちていく。



そのまま死んだっていいとさえ思えるのに、

君の笑顔を思い出すだけで俺の世界が鮮やかに変わるんだ。





「・・・大ちゃん、」


「どーした?」



ただ、何も言わずに。

俺がぎゅ、っと抱き締めれば自然と君も無口に抱き締め返す。

当たり前の温もりが愛おしい。


憧れ、嫉妬とか、そういうのをいっぱいに受ける世界だなんて知っていた。

それでも、知っていく度に汚れる心。


だけど君と居る時だけは、そんなこと全部忘れてしまえるんだ。




そっと、感じる体温。

君はいつもそう。

何よりも温かくて優しい。


その笑顔に助けを求めてしまう。



ふと、思いが溢れるように言葉が溢れる。




「ねえ、」


「なに?」



「もしも世界と俺、天秤に掛けるとしたら、

・・・大ちゃんはどっちを選ぶ?」



意地悪な質問だって解っている。

大ちゃんは"えー"なんて苦笑い。

きっと、俺一人よりもみんなを選ぶよね。


予想くらいはついてたけど、言葉が溢れてしまったんだ。





「変なこと聞いてごめんね」



そう言って俺も苦笑いすると、大ちゃんが俺を強く抱き締める。




「俺さ、多分ー・・・山田を選ぶと思う」



自分から聞いた癖に、耳を疑った。

なんで、どうして。




「でも、俺一人より、家族とか友達とか・・・」



ああ、俺、戸惑っている。

ー嬉しくて。

ただ、嘘でも"俺"と答えてくれただけで満足なはずなのに、
もっと聞きたくて否定の言葉を連ねる。


君が俺を好いてくれるだけで、世界が変わるんだ。




「うーん、なんだかんだ、俺は山田を取る。絶対」



そう言った大ちゃんは真っ直ぐ俺を見て、"だって、愛してるし"なんて言いながら笑った。

その言葉を聞き終わると同時に流れる涙。


"よしよし"って子供をあやすように優しく頭を撫でてくれる。




「俺も、大ちゃんが大好き・・・っ」



俺はそう言って大ちゃんの腕の中に埋まった。

そっと添えてくれる手が愛おしい。






俺は、きっと誰より君を必要としていて。

だって君の言葉や行動一つで世界がくすみ、鮮やかに変わる。



だから俺は、君が俺を必要としてくれるってだけで、


どうしようもなく幸せなんです。














(虚無感をこの愛で埋めて、)(君でいっぱいにして)


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