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□臆病者は涙を堪えた
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泣いてしまったら、それこそ。





臆病者はを堪えた






ino side





欲しいのは最初から君だけ。

そんなのとうに理解しているというのに。





「山田っ、」


「うわ、大ちゃん止めてよー」


「えー、やだ!」



君が悪戯っ子なのも、山田と親友なのも。

それ以上の存在ではないことも、解っているつもりだ。

君がまだ誰のものでもないことも。


それでも、独占欲が溢れ出してくる。



告白――して、自分のものにしてしまえばいい話なんだろうけど。

生憎"これ以上下の存在になりたくない"と言う保護心から中々出来ない。


特に君は鈍感でそういう感性が疎いことも、ずっと好きだったから知ってる。

だからこそ、言葉にしなきゃ伝わらないのが嫌でも解ってしまうんだ。



ねえ、そんな笑顔みんなに振りまかないでよ。

――大ちゃん。




俺は山田がいなくなったのを見計らって君を抱き締めた。

大ちゃんは丸い目を大きく見開いて抵抗する。




「伊野ちゃん、どうしたのっ!?」



そう言い暴れる君に冗談っぽく"だって大ちゃんが可愛くて"なんて言い返せばすぐに笑い返す。




「もー、びっくりしたよー」


「ごめん、ごめん」



そっと離れる体温を、俺はどうすることも出来ない。

名残惜しく感じながらも、冗談っぽく仄めかすためにあはは、と乾いた笑いを洩らした。


ああ、好きだと言えたらいいのに。


何十回、何百回君を想った。

でも、それだけじゃ届くことなんかなくて。

ある意味一線をひいた君の笑顔がもどかしく思えた。





ほら、また"じゃあね"と笑う君を引き止めることが出来ない。

恋に臆病すぎた。



なんだかそんな自分が悔しくて、届かない想いが苦しくて泣きそうになるけど、グッと堪える。



泣いてしまったらそれこそ、俺は――・・




そう思って、溢れそうになる涙を必死に堪えた。

結局どうすればいいか理解は出来ていても、臆病な俺は行動に移すことが出来なかったんだ。










(臆病者は涙を堪えた、)(ねえ、いつか想いは届きますか)










暗い話が好きなんだ←
バットエンドが好きなんだ((爆

そして伊野ちゃんは泣きそうになっても堪えてそう(^q^)


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