【長編】 紅の巫女
□⊂第五章⊃
レン、決断のときがきました。
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突然の“紅の巫女”の登場により、朝廷は盛り上がっていた。
朝廷にとって“紅の巫女”は救世主。度重なる国の問題に誰もが“紅の巫女”を期待していた。
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外朝の回廊を歩きながら、すれ違う人々の態度に秀麗はムッと眉間のシワを深くする。
「それにしても、皆あからさまに態度が変わったわね。」
秀麗は詩嬉が紅の巫女だと知って驚いたが、「でも詩嬉は詩嬉でしょう?私はあなたが誰であっても親友よ。」とどちらの自分も受け入れてくれた。
そんな秀麗は詩嬉を“紅の巫女”としか見ていない官吏たちに苛立ちを感じていたのだ。
『仕方がありません。それに私には“私”を受け入れてくれた友人がいますわ。それがどれ程嬉しいことか…。』
詩嬉は秀麗、影月、珀明に“紅の巫女”だと打ち明けた日のことを思い出す。
秀麗の言葉。それに頷いた影月、珀明。思わず泣き笑いになった。
(――――レンが心の友と呼ぶ気持ちがわかりますわ…。)
「ところで詩嬉、今日うちへお夕飯にこない?燕青が貴方に会いたいっていうんだけど…詩嬉は燕青と知り合いなのよね?」
久しぶりに聞く燕青の名に詩嬉は嬉そうに目を輝かせる。
『本当ですか?是非お邪魔させてください!…久しぶりですわ、燕青に会うのも…。あっ、燕青とはレンと旅をしていた時に茶州で会いまして。あんな恰好でしょう?山賊と間違えて襲ってしまって。』
一緒にいた秀麗と影月は色々と驚いた。
龍蓮と旅!?てゆーか山賊にあったら普通逃げるものであって襲いかかったりしないんじゃ…。
二人はどうも最近、詩嬉と龍蓮は似た者同士なのではないか………と思うのだった。
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その日の夕方。
『燕青!!久しぶりです!』
燕青は走ってきた詩嬉を抱きとめ、頭をくしゃくしゃに撫でた。
「ひっさしぶりだな〜、詩嬉姫さん。どうも前回貴陽に来たときはすれ違いになっちまったみたいだな。」
会いたかったんだが…と続けたようとした燕青の言葉を詩嬉が遮る。
『レンには会いましたか?燕青。何事もないとは思いますが心配で…』
燕青は盛大に苦笑いを浮かべる。
「…ったく、俺との感動の再会よりもレンてか?変わんねーな、詩嬉姫さん。」
詩嬉は赤い顔をして俯いた。
「なんだかあんな詩嬉さんを見るのは初めてですね〜。」
「…そうね。ねぇ影月くん。詩嬉と龍蓮は恋仲ではないっていってたわよね?…なんか最近、逆になんで恋仲じゃないんだろうって思うんだけど…」
二人は少し離れた所で呟いたのだった。