【長編】 紅の巫女
□⊂第七章⊃
霄太師、私もお供いたします。
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秀麗と影月が茶州へと発ちひと月余りが経った。
「詩嬉も茶州へ向かうのだろう?私と一緒に行かぬのか?」
どこから潜りこんだのか、仙洞省長官室で優雅に寛ぐ龍蓮。
『ええ、龍蓮。私はもう少し後から行きます。まだ時ではありませんので。』
詩嬉に考えがあるのは分かっていたがあくまで新婚。離れがたい。
「…わかった。では先に発つ。名残惜しいが………。」
少し拗ねてみせる龍蓮に、『こういうところは父様に似ている』と思い苦笑いを溢した詩嬉。
『……私もですわ。レン。…………秀麗と影月くんをお願いします。』
「勿論だ。茶州で会おう。」
そしてその翌日、龍蓮は茶州へと旅立った。
―――――――
その頃外朝では吏部尚書についての噂が絶えなかった。
――――吏部尚書が病にかかり出仕できなくなった
――――やっとでてきたかと思えば尚書室で鬱状態になっている
――――黒髪の人形を持って呪いをしている
――――誰かを呪っているのでは…?
………………等々。
『………かなりの噂ですね……。』
このままでは吏部が機能停止になる。
数日帰ってこない絳攸。きっと珀明も邸に帰れていないだろう。
詩嬉はここ数日、父親に避けられていた。
『……そろそろ強制調教ですわね。』
詩嬉は黒い笑みを浮かべて吏部へと向かった。