【長編】 紅の巫女
□⊂第十一章⊃
ラン様、これが最期ですわ。
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■仙洞省長官室■
暗くなった室に蝋燭がゆらゆらと灯っていた。
リーンッ という鈴の音と共に灯りは消える。
書簡に目を通していた詩嬉は顔を上げ、消えた蝋燭に向けパチン、と指を鳴らした。
音と共にまた火が灯る。
『―――随分とお久しぶりですね、ラン様。』
室の扉にもたれ掛かり、腕を組んでいる姿は紛れもない藍龍蓮だった。
「………お前、自分が何者か知ってたのか?自分が“紅の巫女”として、何度も転生を繰り返していることを。」
龍蓮の姿をした藍仙はじっと観察するように詩嬉を見つめた。
『―――ええ、前世の記憶はありせんが自分が“紅の巫女”であり、また“紅の巫女”として生まれなくてはならないことだけは知っていました。あなた方なら前世の私も知っているのでしょう?』
藍仙はただ黙って詩嬉を見つめる。
初代“紅の巫女”は蒼玄の時代に誕生した。
“仙”ではなく、異能をもったただの人間。
常に王の傍で国政にかかわり、その力をもって国を救った。
その為、ただの人間であった“紅の巫女”は異能を使う度に命を縮め短命だった。
だが不思議なことに数百年ごとに同じ魂を持って生まれ変わり、“紅の巫女”として君臨し続けた。
『………納得いかないようですね。』
「―――今までの“紅の巫女”とは桁外れに今のお前の異能は強い。人間というよりわしらに近いぞ。」
詩嬉は困ったような笑いを浮かべる。
『ラン様ほどの力はありません。私は人間ですもの。今の私の力が強いのは、ただ転生のために余力を残していないからです。………“紅の巫女”は私で最期です。』
その言葉に藍仙は目を大きく見開いた。
――“最期”と言った。
つまり、二度と“紅の巫女”は生まれない。
そしてそれは“紅の巫女”が認める“王”が現れたということ。