【長編】 紅の巫女

□⊂第一章⊃
父様、貴陽に帰ります。
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―――――――


■吏部■


トントン、と扉を叩く音がする。

「誰だ?今いそが…っっ!!」

言い終わる前に扉を叩いた主に抱きつかれた。

『兄様!お久しぶりです!』

いきなり抱きつかれて戸惑っていた絳攸だったがその姿を見て驚いた。

「っ!!詩嬉か!?なぜここに!?…というか男装までして…」

『あっ、この恰好は旅の時に女人の恰好だと山賊に襲われやすくて…今日戻ったばかりだったのでそのまま来てしまいました…。兄様、お仕事終わりにして帰りましょう?』

そうしたいのだが――と続けようとした絳攸を詩嬉が遮る。

『父様が明日一日で、今まで溜めたお仕事を片付けると約束してくれましたので大丈夫です。』

「本当か!?助かる。………遅くなったがおかえり。無事でなによりだ。」

突然帰ってきた血の繋がりのない大切な妹に絳攸は微笑む。

詩嬉はとても嬉しそうに兄と手を繋いで邸へと帰っていった。
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