【長編】 紅の巫女
□⊂第二章⊃
秀麗様、ご馳走になります。
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その日の夜、詩嬉は邵可邸に泊まった。
「詩嬉、改めておかえり。茶州はどうだった?」
この邸の主、紅邵可は尋ねた。
『邵可叔父様…茶州は荒れてます。私の力だけでは浄化できません。』
詩嬉は紅家秘蔵の“紅の巫女”
数百年に一度の確率で縹家巫女よりも強い力を持った異能持ちの女児が産まれる。それが詩嬉。
死者の魂を浄化する事ができるが、今の茶州は詩嬉が浄化するよりも早く、多くの命が奪われていた。
「…縹家が今までよりも動き出している。官吏になるのは自殺行為じゃないかい?」
紅の巫女の力を利用しようと縹家はしきりに詩嬉を捕らえ、幽閉を試みてきた。
『私の傍にはいつもレンがいましたから。縹家も藍龍蓮には手を出せません。父様はその事を知っているから私を旅に出してくれたのでしょうけど…私はそんな理由でレンの傍に居るわけじゃないんです…。それに今の貴陽は違います。実は後見人になってもらう変わりに霄太師と取引をしまして。今の貴陽の結界は私の力で張りつめているのです。なのでそう簡単に縹家は介入できません。』
邵可は驚愕する。貴陽の結界を張るなど相当の力が必要だ。
年を重ねる程強まる巫女の姿に、邵可は人知れず不安を抱いたーーー。