【長編】 紅の巫女

□⊂第四章⊃
父様、一緒に懲らしめましょう。
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――――――


翌日、朝議は正午前に開かれた。



「―――そもそもの原因はなんなのか!?主上!!」

官吏たちが紛糾する。

「少し考えればすぐわかるのではないか?紅吏部尚書が証拠もないのに拘束。即刻とりなしたが何をいっても紅尚書がでてこぬ。――紅家当主を不当に拘束など紅尚書は勿論、誇り高い紅一族が怒るのも道理。」

王の言葉に沈黙が覆った。

「…ふむ、高官の中でも知らぬ者のほうが多かったのだな。…蔡尚書はどうだ?」

劉輝はちら、と蔡尚書を見る。明らかに顔色が悪い。

「…い、いえ…その、あまりの事態に、驚いて」

蔡尚書は手巾で汗をぬぐった。

「―――そうだろう。でなければとてもこんな愚かな真似はできまい。」

その言葉から蔡尚書はどんどんボロを出していった。






――――――

『父様、お迎えに上がりました。魯官吏、巻き込んで申し訳ありません。』

巫女装束で現れた詩嬉に魯官吏は驚いた。

「―――紅進士…いえ貴方様が“紅の巫女”でありましたか…!」

驚きを隠せずにいる魯官吏を余所に黎深が立ち上がる。

「いいのか?詩嬉。その姿ででれば朝廷はお前を一官吏と見なくなるぞ。」

詩嬉はにこやかに告げた。

「本当は父様と玖琅叔父様にまかせるつもりでしたが…大切な父様と秀麗をはめ、影月くんの俸禄を奪ったんです。許せません。………それに主上を試すいい機会ですので。」

黎深は“大切な父様”。の言葉にうっとりと酔いしれる。


『さぁ、父様。一緒に蔡尚書を懲らしめましょう?』


二人は邪悪な笑顔を携え、その場を後にした。


――――魯官吏がここから逃げ出したい…と思ったのは言うまでもない。





――――――

そのころ朝議では黄尚書が仮面を外し、蔡尚書から証言をとっていた。

景侍郎は気の毒そうに蔡尚書をみながら上司にもの申した。

「鳳珠、これって詐欺のような気が…」

「――――いや、最初からこうすれば良かったと思うよ、景侍郎。」

扉を開ける開音と、黎深の声に誰もが振り返る。

そこには紅黎深と魯官吏――――そして巫女姿の美しい女人。

とたんに波紋のようにざわめきがひろがった。





―――紅進士ではないか?

―――なぜ進士が朝議に?

―――あの紅色の巫女姿………まさか!?


ざわめきが増す中、正気を戻した蔡尚書は詩嬉に指を指し誰もが口にしていない言葉を叫んだ。
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