【長編】 紅の巫女

□⊂第七章⊃
霄太師、私もお供いたします。
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『盛大な勘違い中、申し訳ありませんが違います。茶州には仕事で行くのです。まだ紅家を出たりしません。それに紅家を出ることになっても、会えなくなる訳じゃないでしょう?…………私は父様が大好きですもの。』

その瞬間、黎深の顔がパァッと花が咲いたように明るくなる。

『茶州に発つまでは父様の我が儘を聞いてあげますわ。でもその代わりお仕事してください。』

“我が儘を聞いてくれる”=詩嬉を独占できる――――と思った黎深は直ぐ様頷き、仕事へ戻ったのだった。




「―――相変わらずあの弟を動かすのが上手だね、詩嬉。」

棚の後ろで様子を伺っていた邵可はニコニコ笑いながら姿を現した。

『邵可叔父様……。お騒がせいたしました。』

詩嬉は“盃”を札に戻すと邵可に謝罪する。

「茶州に行くといってましたが……それは茶州州牧と関係が?」

先程のニコニコ顔を一変して邵可は尋ねる。

『いいえ、邵可叔父様。秀麗たちとは関係ありませんわ。……今のところですが。今回は後々の国政に関わることだと思いまして、私と羽羽様の判断で茶州へ。………秀麗は大丈夫ですよ、邵可叔父様。静蘭がついてます。』

邵可はほっと安堵の溜め息を溢した。

続いて詩嬉は申し訳なさそうに口を開く。

『…私が留守の間、父様をお願いいたします。』


これには苦笑いを浮かべるしかない邵可だった。
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