【長編】 紅の巫女
□⊂第八章⊃
晏樹様、貴方の思いどおりにはいたしません。
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その夜、秀麗と影月は現れた龍蓮を歓迎せず冷たくあしらった。
“藍龍蓮”を利用しない為に。
「お願い帰って。あなたを利用するわけにはいかないの。」
その言葉を最後に龍蓮は二人の友と別れた。
『………レン。』
その様子を見ていた詩嬉は龍蓮の傍に近寄る。
「………利用されるために残っていたのだが。………詩嬉と同じだ。心の友らは私を利用しようとはしない。それがとても嬉しいのだ。」
詩嬉は黙って龍蓮の傍にいた。
ずっと二人だけだった世界に共通の友ができた。
それがどんなに奇跡に近いことか。
“紅の巫女”だろうが“藍龍蓮”だろうが、 ただ一人の人間として見てくれる、大切な友人。
二人は暫く寄り添い、降るような秋の夜空を見上げていた。
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「けっ、結婚!?藍龍蓮氏と詩嬉殿がですかっ!?いつ如何なる理由で!?」
全商連金華特区長である柴彰は理解できないとばかりに驚いてみせる。
『報告が遅くなりすみません。まだ公にはしていないので。』
詩嬉が飄々と言うのでそれ以上何も言えなかった。
確かにいつも龍蓮の傍にいた詩嬉。
少し、いや結構詩嬉を気に入っていた柴彰は(なぜよりによってあの藍龍蓮なんだ…)と誰もが思う一言を心の中で呟いたのだった。
「それにしても詩嬉は本当に顔が広いのねぇ。まさかあの人とも知り合いだったなんて。」
詩嬉は“あの人”が朔洵であることを察して話を始めた。
『一年ほど前にお会いしまして。知人によく似た魂の上に後ろに大量の怨霊を連れ歩いているんですもの、気になってしまって。思わず出会い頭に“貴方呪い殺されたいんですか”って聞いてしまいましたわ。』
そこにいた全員が唖然とした。
あの朔洵にそんなことを言ってのけるのは詩嬉だけだろう。
『では私はそろそろ行きますわ。仕事がありますので。ある程度金華を浄化した後、私も琥連に向かいます。』
そう言うと詩嬉は颯爽と出ていったのだった。
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その翌日、秀麗の元に“花の招待状”が届いた。
程なくして、朔洵が秀麗を迎えにきた。
詩嬉は金華の浄化をしながら星をよみ、“盃”が持ってくる情報と照らし合わせ行く末を導いていく
(……やはり読みどおりになるわ……。“あの人”よりも早く、魂を回収にいかないと。)
詩嬉は急いで琥連へ向かった。