【長編】 紅の巫女

□⊂第十章⊃
父様、朝賀に出席致します。
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―――やがて季節は本格的に冬将軍の訪れを迎える。

龍蓮と詩嬉はひと足先に茶州を発った。



――――――


「……詩嬉、なぜあの男を式神にしたのだ。」

いつもなら野宿の多い旅だが季節は冬。流石に宿を一室借り、窓の外を眺めながら龍蓮は言った。

『気付いていたのですね。…晏樹様が朔洵様を狙っていたことが第一、第二に彼の魂は秀麗でなくては浄化ができないからです。“棗”や“盃”のように私が創りだした式神ではありませんので、その時がくれば魂は天へ帰りますわ。』

龍蓮は立ち上がると寝台に座っていた詩嬉を押し倒した。


突然の出来事に詩嬉は瞳を大きくして龍蓮を見つめる。


「式神だろうが詩嬉の傍に、他の男がいるのは気分が悪いものだ。それでなくとも詩嬉を狙う外道共はたくさんいる。詩嬉は私のものだ。誰にも渡さぬ。」

龍蓮の顔が近い―――と思った時には、すでに唇を奪われていた。

初めて重ねた時のものとは違う、長く貪るような口付け。

息苦しくなり、龍蓮の胸を軽く叩くとその両腕を寝台にぬいつけられた。


『―――っん、…はぁっ、レ、レン…』


ようやく離した唇から自分の名を呼ぶ愛しい声。


龍蓮は理性を総動員して呟いた。


「…約束を違える訳にはいかぬからな。仕方がない。続きは式を挙げてからだ。」

そう言うと龍蓮は詩嬉を抱き締め、いつもどおり布団に入る。


ありえないくらい顔を赤くした詩嬉は眠れぬ夜を過ごしたのだった。
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