【長編】 紅の巫女
□⊂第十二章⊃
瑠花様、取引を致しましょう。
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「詩嬉様!ご無事で何よりですじゃ!」
羽羽は嬉しそうに詩嬉に飛び付き、詩嬉は慣れたように羽羽を抱き上げた。
まるで母親が子供を抱き上げるかのような仕草に一同は苦笑いを溢す。
「詩嬉!貴方、人体切開できるって本当!?」
危機迫る秀麗の様子に詩嬉は顔色を変えた。
『はい、葉先生に教わりましたが………まさか奇病が発生したのですか?』
それに秀麗が頷き、詳細を詩嬉に話した。
秀麗から話を聞いた詩嬉は額に手を当て苦悶の表情を見せる。
―――縹家ばかり気にしすぎていた―――。
自分の愚かさを嘆いたが今はそんな時間はない。
『……すぐに行動にでましょう。一人でも多くの命を助けるために。』
誰もが頷き、それぞれ室をあとにした。
―――――――
「………縹家に行ったのか、詩嬉。」
先程とは違う口調で葉医師―――黄仙は詩嬉に尋ねる。
『……分かりましたか。少し縹家ばかり気にしすぎてました。』
顔色の悪い詩嬉の額に黄仙は手を置いた。
するとゆっくりと詩嬉の顔に赤みが戻る。
「力を使いすぎじゃ。藍のに訊いたぞ。……ほっほ、あいつが何と言ったと思う?“詩嬉を見ててやってくれ”と。」
詩嬉は笑った。
『ラン様は優しいですからね。』
その言葉に黄仙は目を見開いて驚いて見せる。
―――藍の、が優しいじゃと?!
黄仙は信じられないとばかりに言葉を詰まらせたのだった。
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