【長編】 紅の巫女
□⊂第十二章⊃
瑠花様、取引を致しましょう。
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その後詩嬉は葉医師と共に、人体切開の術を掻き集めた医師に教え続けた
その間、秀麗は前商連と見事取引を成功させていた。
そして朝議を迎える。
―――――――
「越権行為すぎる!あまりにも勝手ではありませんか!?しかも仙洞省長官が医師に混じって茶州入りするだなんて!そもそも医術は仙洞省の管轄ではない!」
議論はすでに始まり、ずらりと並んだ高官たちは悠舜に怒涛の批難を浴びせていた。
『治療には“人体切開”しかありません。人体切開の経験があるのは私と葉医師のみですのでいかねばなりません。』
普段の詩嬉とは違う冷ややかな瞳。
しかし高官は負けじと口を開いた。
「それに前商連に借金をして茶州に援助するなんて………」
「ではその援助を縹家が出す―――というのは如何でしょう、陛下?」
突然現れた声の主に一同が驚愕した。
気配なく現れたその男の衣は薄い藍色。
月と彩雲華を散らした家紋は縹家直紋“月下彩雲”
詩嬉は父親と霄太師がその男に殺気を送ったのを肌で感じた。
「お初にお目にかかります、陛下。」
突然の縹家当主の登場に目を見開いた劉輝だったが、すぐに表情を戻す。
「―――突然現れて縹家が此度の奇病に全面協力する理由を訊きたい。」
劉輝はすぐに本題に入った。
試されているーーー、そう劉輝は瞬時に判断する。
璃桜はクス、と笑うと優美に劉輝を捉えた。
「此度の奇病に縹家が全面協力するのには条件があります。―――朝廷に“紅の巫女”の復活を。」
ざわっと空気が揺れた。
縹家の全面協力ほど欲しいものはない。
それに差し出された条件は“紅の巫女”の復活。
朝廷の官吏たちにとってこちらも願ってもいない好機。
詩嬉は一人瞠目した。
‘璃桜がそなたを諦めるとは思えぬがな。’
瑠花の言葉が頭をよぎる。
誰もが“是”と応える取引内容に、詩嬉は覚悟を決めた。