ODS

□潜水艦
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 海自の潜水艦搭乗員が何者かに殺害された。本来本店が仕切、おなじみ所轄は邪魔者扱いされながらも犯人逮捕という形を取っていた。ところが、今回に限って事態が変わった。
 犯人は同じ潜水艦に乗務している海自の人間らしい・・・其れを警察庁に挙げられたら政治的に厄介という事で。犯人特定の情報が一切流されなくなった。

 「此にて、『潜水艦乗組員殺人事件』は捜査終了とする。今後は防衛庁内での扱いとする。本部解散。以上。」

 室井の憤懣たる声で捜査会議に集まった、本店と所轄に刑事達に告げると、蜘蛛の子を散らした様に三々五々慌ただしく散っていった。その中で室井だけが拳を硬く握ったまま眉間に深く皺を寄せ、憮然と一点だけを睨み付けていた、その視線の先は、現場を一切顧みない上層部にだった。

 『 ・・・室井さん・・・』

 会議内は一斉に片付けに入り、騒然となっている中、青島は室井の姿を見つめていた。
 
 フッと小さくため息をつくと室井は会議室から出て行ってしまった。その様子に慌てて青島も室井の後を追った。

 容疑者の尾行の様に気付かれない様追いかけていくと室井は自販機のある喫煙所に入っていった。小銭を入れ缶コーヒーを取り出し一口飲んだところに、青島は気づかぬフリして入っていった。
 
 「ったく〜。なぁ〜にやってんだろ?本店の人達は。  オレ達がいなけりゃ手柄もへったくれもないってのに、上に行ってくれなきゃオレ達だって動けないだろうにってさ。まっ、今日は報告書も始末書も何もないから早く変えろっと。」
 
 独り言ではない。わざと室井に言ったのだ。

 「わるかったな。役立たずで。」

 口をへの字に曲げ、青島の方に顔を向ける訳もなく片方の眉をつり上げ聞こえよがしに言い返した。

  「あっ。室井さん居たんですか?」

「知っていて来たのじゃないのか?キミは?」

 相変わらず無愛想言い方だが、青島の突っかかりには答えてくれていた。

 「ところで、キミはこんな所へ私に油を売りに来ても良い身分なのか?」

 「あ、良いんです。オレちょっとだけ頑張っちゃったし、今休憩なんッスよ。 あれぇ?タイミング良い所にお邪魔しちゃいました?いやぁ〜ちょ〜ど喉乾いてたんっスよね。オレの為にコーヒー買っておいてくれたんッスか?優しッスね室井さんって。」
  
 いつもの笑顔で答えながら、室井が一口飲みかけた缶コーヒーを取り上げると気に掛ける事なく口を付け2〜3口飲み終えると、呆然と自分を見ている室井の手にまた戻した。

 「あれ?オレって室井さんと間接キスしちゃいましたね。ラッキーだな。   今日『PEINホテル7025』に予約してますから。御馳走様っした。」

 周りを見回し誰も居ない事を確認すると、素早く室井の唇に軽い接吻し、喫煙所を後にした。
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