ODS

□バトル オブ ザ・きりたんぽ
1ページ/4ページ

 東京都内警視庁官僚達の官舎。高級マンションを彷彿させる建物だ。セキュリティーは万全24時間態勢不審者の侵入を許さない所に、室井管理官や新城補佐官が住まう場所。

 新城は3階に室井は8階に住んでいた。お互い知る所であったが、新城の方が休み前に室井の部屋に頻繁に邪魔をしに行っては室井の料理を食べるのが好きなのであった。私服姿の室井を知っているのは自分だけ、室井の私生活を知っているという特別な優越感を感じていた。


 ある夜、官舎に怪しい人影がガラスのドア越しにその映し出された。官僚らしからぬ整髪していないボサボサの髪。スーツ姿ではない大きめのヨレヨレのコート。その脇に抱えられた大きめのバッグ。 
 
 ここに住んでいる住人の身内なのか、慣れた手つきでポケットからカギを取り出すと入り口のドアを開ける呼び出し台に差し込み7桁の暗証番号を入力をし、当たり前の様に堂々と中に入っていった。

 エレベーターに滑り込み10階まであるボタンに迷いもなく8階を押す。

 エレベーターは男を乗せ静かに8階に向け登っていった。

 いつもなら8階まで何処にも止まらず上がって行くのだが、その日は3階で止まった。

  ピンポーン

 ドアが開き、お互い顔を上げた瞬間先に叫んだのは新城の方だった。


 「空き地署の問題児!!何故お前みたいな所轄の人間が此処にいる?!!っというか、何故に入れた?!!不法侵入で緊急逮捕するぞ??!!!おいっ、何処に行くつもりだ?何とか言え!!!青島ぁ!!。」

  まるで、親の敵にでも会った様な勢いで怒鳴る新城に動じる訳でもなく青島は、ニヤけた笑みで答えた。

 「あ、新城さん今晩は。新城さんもここだったんですね。」

 「『あ、新城さん、今晩は。』じゃない!!答えろ!青島っ!!」

 「はい。実は昨日室井さんから『家に泊まりに来い。美味いきりたんぽ食べさせてやるから。』って誘って貰っちゃって。」

 『!!!えっ?  うそっ?!!なんて言った?  泊まりに来い? オレの時には絶対に泊まらせてくれずに帰れって、帰されるのに・・・誘ってくれた事ないぞ?!!』

 軽いショックの中昨日の事を思い出していた。昨日夕方事件も片づき室井が帰宅の準備をしていた時新城はいつもの様に声を掛けた
、が  いつもならOKの返事を貰うのにその日に限って態度が違っていた。

 少々困った様に大きな眸を曇らせ顔を赤らめていたが、新城にきっぱり言い放った。

 「あ、明日・・明日の夜は都合が悪い。またにしてくれ。」

 「なんだ、お前にしては珍しい客が来るのか?」

  「あ、あぁ、そうだ、ちょっとした知り合いだ。」

 「そうか、それじゃ仕方ないな。またな。」


 『知り合い・・・って、コイツの事だったのか?!!』


 自分の目の前でヘラヘラしている、忌々しいこの男!!

 自分が室井と特別仲が良い所をその知り合いとヤラに見せつけるつもりが・・・・よりによって、この憎っくき湾岸署凶行犯課巡査部長 青島俊作。

 空き地署が絡む事件ではいつも室井は青島を庇う。自分が窮地に立たされても・・・

 そんあ青島の存在を、自分の中で唯一の天敵と見ていた。そいつが・・・そいつが・・・今夜室井と一夜を共にする事が許せなかった。

 『室井の貞操を守らねば。』

 「おい、青島。オレも今から室井の家に行く。」
  
 急いでポケットから携帯を取りだし、室井に電話を掛けた。 数回の呼び出し音で繋がるとさっきまでの態度が嘘の様に、冷静な新城の声に戻っていた。

 「あ、室井か?  今エレベーターで青島君と会った。一緒に来ないかと言ってくれたが。」
 その言葉に青島も驚きの顔は隠せなかった。

 「新城・・・申し訳ない。今夜は青島と2人だけでいたいんだ。」

 受話機越しに聞こえてきた声に返す言葉もなく、「そうか、じゃあ。」と答え通話を切るしかなかった。

 「あの、オレもう行きますね?室井さん待たせるといけないんで。」

 ちょうど登りのエレベーターが止まりドアが開き青島が乗り込み振り返えり新城にとどめの一撃を刺した。
 

 「すいません、新城さん。今夜室井さんの『きりたんぽ』 頂いちゃいますね。」

 床に崩れる新城を置いて、勝者青島の乗せたエレベーターは8階へと消えていった。







 
  「きりたんぽ」というネタだけで4〜5本腐ラワーさいたわ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ