「仲間・・・?・・・だと? オマエとか? って事はゲイ専門の秘密売春クラブって感じか?」
紫煙を吐きながら一瞥すると鼻でせせら笑った。そんなチェギョンを見つめスンジョンンは言葉を続けた。
「 『仲間』というよりも、『手札』と言った方が正しいのでしょう。カレは私達組織の監視の中で泳いでいるだけですけどね。 其れを彼自身は知ら無いからです。我々は、有る人物が彼に接触してくるのを待って居るんです。」
「そのしつこいストーカーを壊せということか?」
「最終的にはそうなっても仕方ない事であったならば、関与しません。ボスは、その人物からどうしても手に入れたい物があり、其れを手に入れるか、隠してある場所を聞き出して貰うのが、貴男に頼みたい仕事です。」
「 最終的にはねぇ・・・ 最終は無いってこったろ?・・・アタマに会っやっても良いぜ。契約は気の変わらない内に済ませちまったほうがいいからな。」
「飲み込みの早いヒトは嫌いじゃない。やはり私が欲しいと感じた雄だ貴男は。では早速ボスの所に向かいましょう。」スンジョンはいつもの微笑みで返した。
「そこのクローゼットに貴方用のスーツを用意しておきました。良ければ着て下さい。貴方のサイズに合わせて創らせました。」
「ふ〜ん。大層なっこた、その服にも色々仕込んでありそうだな。GPSか盗聴器が。」
「フフlフ・・・貴方らしい考え方だ。別に着なくて結構ですよ。むしろスーツなど身に纏ってしまうと貴方の魅力が半減してしまいそうだ。」
スンジョンは携帯に手を伸ばし伝はを始めた。
「私です、今から20分後に伺います。 はい、勿論彼も一緒に、承知致しました。有り難うございます。」
電話を切り扉の向こうに向かい「支度を。」そう言い放つと、間入れず黒服の男達が身支度一式を持って部屋に入ってきた。
「5分待って下さい。」スンジョンの言葉に2本目のタバコに火を付けた。
「オンナの身支度は5分と言ったって1時間は掛かる、待って手やるさ。」そう言い返し手を振り替えした。
スンジョンの言葉通り身支度からホテルのフロント迄、10分しか時計の長身は動いていなかった。全ての行動に無駄な時間を掛けない事、彼がボスと言う男の右腕なだけの事はあるとチェギョンは認めざる終えなかった。
「さぁ、どうぞ。」目の前に横付けされた黒の高級車へ促された。
チェギョンは乱暴に乗り込みながら小馬鹿にした様に吐き捨てた。
「こんなハンサムな王子様にエスコートされても12時には魔法が消えてしまうのよ。ちゃんと無事にお家まで返してね。」
そんな言葉にも動じることなく、むしろ楽しむかの様に「いいえ、私は王子様でも有りません。一介のネズミです、これからお会いになる王と過ごす事で時さえ忘れてしまうでしょう。」そう答えクルマは『王』と呼ばれる男の元へ走り出した。
闇の中を静かに走っている車内でチェギョンは一体何処に向かって居るのかを時折見える建物の景色から、頭の中で記憶というデーターを引っ張り出し現在地を探り出そうとしていた。そんな様子をスンジョンは気に留める様子もなく、ブランデーを飲んでいた。
「中清南道に向かっているんです。あと1時間もあれば着くと思いますから、安心して下さい。」
自分の行動を読まれたチェギョンは軽く舌打ちをしながら、相手がただ者ではない事を改めて知らされた。
「てっきりオレは仁川の高級別荘にバカンスにでも行くのかと思ったぜ。」
「確かにリゾートとしては良いでしょうが、あそこは命が幾つあっても足りませんよ。」
「毎日釣り三昧だぜ。」
「貴男が、護ってくれるのであれば夢ではないのでしょうが。」
「 『王ちゃま』の子守りなンざ、まっぴらゴメンだぜ。」
「・・・・でしょうね。・・・」
そんなたわいもない話をしている内に車は山の方へ進み竹林の私道らしい一本道を何の迷いもなく吸い込まれるかの様に奥へ走っていた。
「あそこです。」
竹林を抜け目の前に広がった景色に、一瞬自分がタイムスリップでもしたのかと錯覚を起こす程の建物が其処に建在していた。遠い昔に消えた王朝時代の宮殿と見間違う位威厳を放つ建物に、笑うしか無かった。
「おい、ドラマのセットか何かか?冗談キツイぜ。」
「いえ、此処で『王』は貴男が来るのを待っているのです。臆しましたか?らしくないですね。」
「何とでも言え。」
車がゆっくりと重厚な門に近づくと、重い音を立てて中から数名の男達が現れチェギョン達を迎え入れた。
「鬼が住むのか蛇が住むのか、楽しみだぜ。」
一体どんな漢が自分を待ち受けているのか、自分の本能なのか闘争心という炎が滾り始めていた。