桜のしらべ
□3 かごからはばたく鳥
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自分の歌声が、身体中に染み渡っていくのを感じる。
歌っていれば、全てが解放される気がした。
今まで縮こまっていた羽がのびていくように。
最後の音を程良くのばして歌い終えた。
自然と笑顔になって心が軽くなった気がする。
昔から歌うことは好きだった。
口べたで、自分の気持ちをうまく伝えられない私は、歌っているときだけは素直に表現できた。
今も昔も、私には歌しかないのかもしれない…
歌うことで自分を見いだしたそのとき、
バーン!!
部屋で唯一の入り口である襖が、大きな音をたてて倒れてきた。
「いててて…新ぱっつあん押すなよ!」
「だー!平助の髪が邪魔なんだよ!身長ちっちぇーくせに!」
「ちっちぇー言うな!俺はこれから伸びるんだ!」
きょとんとして2人のやりとりを見ていると、ようやく私の視線に気づいたようで笑顔で言った。
「よっ!俺、藤堂平助。年近そうだし、平助でいいよ!襖飛ばしちゃってごめん」
「俺は永倉新八!詩織ちゃんだったよな?よろしく!」
陽気に挨拶する2人。
だが私は思わず身構えてしまった。