桜のしらべ
□3 かごからはばたく鳥
3ページ/6ページ
この人たち、何しに来たんだろう…
もしかして私、切腹とか言われるのかな…
新選組の人がこんなふうに顔を合わせて私の部屋を訪ねて来るのは初めてだった。
ずっとかごの中だった私は、久しぶりに見た彼らにぎょっとしてしまう。
「俺たち詩織に何もしねえよ!ほら、刀だって持ってないし…」
「そうだぜ。ずっと飯食ってなかったみたいだから心配でよ。ちょっと様子を見に来たら綺麗な歌声が聞こえたんで、思わず聞き入っちまったよ」
2人は両手を上げて、武器を持っていないことをアピールした。
私を心配していると言ったが、本当に信用してしまっていいんだろうか…?
「ありがとうございます…」
とりあえずお礼だけは言っておいた。
そんな私を見て、2人は嬉しそうににこにこ笑う。
「いいって。それより団子食わねえか?さっき巡察の返りに買ってきたんだ」
『いいんですか…?』
「ああ。一緒に食おうぜ!」
永倉さんから差し出された団子を受け取って、口に入れる。
みたらし団子のほんのりした甘さが口いっぱいに広がった。
『おいしい…』
思わず言葉がこぼれる。
ここ数日ほとんど何も食べなかったこともあって、とてもおいしく感じられた。