be in love, again


□4*Memories shining
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ただ求め合うだけの意味のない夜に、私は少しの後悔もなかった。

空っぽの心が埋まったわけではないのに、どこか温かい気持ちになった。

あの夜涙を流さずにすんだのは、千景のおかげ。




それから私たちは交際を始めた。

付き合っていると言っても、そうなる前の言葉は何一つなかった。

「好き」も「愛してる」も一度も交わしたことはない。

きっかけはあの夜くらい。

ただの成り行き。


けれど、そんなものは必要なかった。

下手に言葉を交わさなくても、分かり合っていた。

私は千景が大好きだったし、彼も私を愛してくれていた。

そんなことはさりげない行為でわかる。

私たちにはそれで十分だった。





よく晴れた日曜日の午後、私は千景のマンションに遊びに行った。

付き合ってしばらくしてから知ったことだけど、実は千景は日本人なら誰でも知っているインスタント食品の社長だった。

これなら高級車に乗っているのも、豪華なマンションに暮らしているのも納得がいく。

インスタントラーメンを馬鹿にしていたのにそれを持っていたのは、サンプルか何かでたまたま家にあったのだろう。


『ねぇ。今日は何する?』


私たちのデートはほぼ家の中。

どんなお天気でも外出は滅多にしなかった。

いつもは映画見たり私がご飯を作ったりしているけど、さすがにそればかりでは飽きてしまう。


「何でもいい」

『じゃあパズルね』


私はトートバッグの中から小さめの箱を取りだした。

千景が「何でもいい」と答えるのを予想して、雑貨店で買った物を持ってきていたのだ。


「ふん。パズルなどどこがおもしろい?時間の無駄だ」

『自分で絵を作っていくのが楽しいの!できあがったときの達成感がいいんじゃない』

「絵が欲しいなら買えばいいだろう?」


まったく、お金持ちの考えることは。

でも跡を継いで社長になった千景は、昔からお金持ちだったわけだし、”自分で一からつくる”って発想は、あまり持ち合わせていないのかも。

千景を呆れ半分に睨みながら、箱を渡した。


『とりあえずやってみて』


千景はしぶしぶパズルを受け取った。
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