だから笑って。
□プロローグ
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ざわめく空港のロビー。
大きなスーツケースをいくつも引っ張る人。
家族との再会を喜ぶ人。
それから、別れを惜しむ人…。
『ふ、ふぇーん。真由ちゃーん!!』
「もう!美沙ったら、泣かないの!」
『だって、真由ちゃんと今日でお別れなんだもん!』
「二度と、って決まったわけじゃないでしょ?また遊びに来るから」
『絶対だよ?』
「うん、約束。だから…笑って?」
真由ちゃんは私と小指を絡めながら、心からの笑顔を見せた。
私も涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、笑い返した。
…よかった、本当に。
また真由ちゃんに笑顔が戻って。
「平助、美沙をよろしくね」
「おう!…元気でな」
「うん。またね」
アナウンスが流れ、もうすぐ飛行機が出発してしまうことを伝えた。
真由ちゃんは私たちに手を振りながら搭乗口へ歩いていった。
真由ちゃんの後ろ姿を見送りながら、私はあの日々を思い返していた。
真由ちゃんと平助と私と
3人にあった出来事を……。