*短編小説*

□平凡な恋慕。
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A弥の日常はいたって平凡だ。
朝、起きてから歯を磨いたり、顔を洗ったりすることだってA弥だけに決まった事ではないし、制服に着替えることも、学校に通い勉強することもA弥だけに限らず、日本の学生だったら至極当然のことだった。



A弥には、C太という、幼なじみがいる。



ハチミツ色の髪に琥珀色の涼やかな瞳、すらりと伸びた繊細な指先
程よく筋肉のついた身体に、その見た目を裏切らない、明るく社交的な性格。



自分とは真逆といっていい存在のC太に、A弥は人知れず




恋心を抱いていた。




ーーA弥には、俺がいないとダメなんだ。



C太は、ある点をのぞいて、至って普通の男子高校生である。
学校で授業を受け、昼休みは友人たちに囲まれて昼食を食べて、放課後はゆったりと過ごす。
見目が平均よりも高いので時々女子からの呼び出しも受けるが、それも含めてC太は至って普通の男子高校生だった。



C太には、A弥という、幼なじみがいる。



澄み切った闇のような黒い髪、クマはあるが睫毛の長いぱっちりとした瞳に、男子高校生の平均よりも細い、色白の身体。見た目にあった、根暗な性格。


自分とは真逆といっていい存在のA弥に、C太は人知れず




激しい独占欲を、抱いていた。




A弥が他の同級生と話しているだけで、どうしようもないほどの激情を感じた。

A弥と目が合うだけで、苦しいくらいに心が満たされた。

A弥と会いたい、A弥と話したい、A弥と手を繋ぎだい、A弥と、A弥と、A弥とA弥とA弥とーーーーーー………



気づいたら、A弥の部屋に盗聴器を仕掛けるくらいに、A弥の部屋を盗撮するくらいに、A弥を監視するくらいに



A弥しか、見れなくなっていた。






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