*短編小説*
□進撃のカービィ
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その日は丁度、調査兵団が壁外調査へと向かう日であった。何年か前よりは生存率が飛躍的に上がり、人々は調査兵団に期待するようになってきていた。そんな期待と羨望の中、彼らは出発したのだが……
出発した始めこそは上手く索敵を利用し巨人を回避していたものの、だんだんと陣形は崩れ始めしまいには一部索敵が壊滅にまで追い詰められたとの情報が早馬で団長、エルヴィン・スミスのもとまで届けられた。
このままでは全滅か、とエルヴィンは撤退を知らせようとしたのだが、次いで現れた早馬の姿に、一度手を止めた。
「団長!報告しますっ!……壊滅状態だった右翼索敵、何とか持ちこたえました!索敵復活し、負傷兵以外は陣形に戻りました!」
早馬の報告に、驚き目を見開いたのは、何もエルヴィンに限ったことではなかった。その場にいた全員が奇跡的とも云える事態に驚愕した。
「いったい何があったっ?」
エルヴィンは信じられない、というような表情で兵士に問いかける。周りもその兵士に視線を送る。
するとその兵士も困惑した表情でそれが……と続けた。
「右翼側索敵の話だと……ピンク色の不思議な生き物が、巨人を吸い込んだ、と……」
「…………………………はい?」
流石のエルヴィンも、その兵士の言っている意味が分からず、思わず聞き返した。
右翼側索敵・兵士視点
――――――もう駄目だと思った。
「うわああああああ!!たっ助けてくれぇえええええ!!!」
「死にたくないぃッ俺はまだ死にたくないんだああああ!!」
「誰かっ!へ、兵長ったすけてぇ!」
目の前で食われる仲間たち。
先程まで自分に兵士とはどうあるべきか教えてくれた上司は、今まで同じような志を持ち巨人と戦ってきた同期は、今や巨人の口の中へと入ろうとしていた。
右側からの黒い煙弾を確認してすぐ、奇行種の群れ。
通常種とは違い行動の予測がつかない奇行種に、陣形は崩されガスも底を尽きてきた。
「もうだめだっ……おしまいだ……っ!!」
誰もがそう思った。
――――そんなときだった。
「ぽよっ?」
「……………………はっ?」
何処からか聞こえてきたえらく可愛らしい声。
俺が下を向くと、そこにいたのは、
「っ!ぽ〜よっぽぉーよ〜っ♪」
ピンク色の、不思議な生き物が、いた。
その生き物は、俺が自分を見たのが嬉しかったのか、俺に駆け寄ってくると足に引っ付いてきた。膝くらいまでしかないその生き物。一体何なんだろうか。新種の動物か?
……………………………………って!
「コ、コラっ!ここは危ない、早く避難……」
しろ、といいきる前に、巨人が俺の方に走ってきた。
何とかこのピンク色の生き物だけでもっ、と逃がそうとするが、その生物は俺のまわりで楽しそうにはしゃいでいる。いや、もう、ダメだ……っ!!
「むーっ。すぅううううっ」
――――――――――ヒュウウウウウウウウウウウウウウウウツツツ!!!!
すると、信じられないことにその生き物は俺の方に走ってきた巨人を周りの巨人もろとも吸い込んだのだ。
いきなりのことに俺は唖然とする。
周りもポカンとその光景を見つめる。
「ふぁああぁ〜〜♪」
その生き物は巨人を吸い込んだあと、キラキラと目を輝かせて変な鳴き声をあげながら残っている巨人の方へと走っていった。
―――――――ヒュウウウウウウウウウウウウウ!!!!!
《ギュアアアアアアア!!!》
《アーアーアー!!》
辺りにいた巨人が、みんなピンク色の生き物の口へと入っていく。一体どんな体をしているんだ、あの生き物はっ!?
「―ーーぽよっ!……けぷっ」
ピンク色の生き物はお腹いっぱいになり満足したのか、またこっちに戻ってきた。
周りで戦っていた仲間も、生き延びた奴が多い。怪我はあれど、何とか生きていた。
「むーっん〜〜」
ピンク色の生き物が口をもごもごとさせ、難しい顔をした。どうしたんだと俺も周りの仲間も近づく。
すると、
「―――――ぺっ」
ピンク色の生き物は、口から俺の仲間を数人、吐き出した。
転がるように出てきた仲間は、何が起きたのかわからない、と言った顔をしていた。
「……おい……こりゃ何なんだ?」
誰かが口を開く。
それは誰もが思った疑問におもったことだった。
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