お題
□2.得意料理の披露
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「おーっし。準備完了、っと」
夕飯の準備が整って、ふと時計を見るともうすぐ大石が帰ってくる時間になってた。
今日は、一緒に暮らし始めてから初めて一緒に夕飯を食べる。
昨日は越してきたばっかで、なんの用意もできてなかったから外食だった。
こういうときに限って失敗しそうで怖いけど、大石ならどんなもん出しても「おいしいよ」って言ってくれるよな。
これが初めての料理ってわけじゃないから、大丈夫っちゃ大丈夫なんだけど、やっぱカッコつけたいじゃん。
確実に成功するもの、っていったら得意な玉子料理だろう。
朝は和食っぽく、ご飯に味噌汁、焼き魚に納豆。
ほとんど料理じゃねーよ、こんなの。
ただ焼くだけ、溶かすだけ、器に移すだけ、の簡単メニューだもん。誰にだってできる。
だから夕飯は、俺らしく玉子を使った洋食メニュー。
ありきたりだけど、ふんわりトロトロ玉子のオムライスとサラダ。
チキンライスは完成してるから、大石が帰ってきたら玉子を焼きながらレンジでチンする手筈。
サラダは盛り付け終わって冷蔵庫に入ってるし、手作り和風ドレッシングも完璧。
あー、早く帰ってこないかな〜。
暇つぶしにテレビでも見ようと、リビングのソファで新聞を広げたら、玄関のチャイムが鳴った。
大石だ!
すぐさま立ち上がって玄関に向かい、急いで鍵を開ける。
「ただいま、英二」
待ち望んでた大石の姿。
「おっかえりvv」
スーツ姿の大石は、いつみてもカッコイイvv
俺は大石からカバンを受け取って、ついでに上着も受け取った。
「先にご飯?それとも風呂?」
ネクタイを解いてる大石に、新婚ならではの質問をしてみる。
シュルって音と一緒にネクタイを外し、ワイシャツのボタンを外した。
「んー、ご飯にしようかな」
「俺は?」
「…メインディッシュで」
「りょうかーいvv」
一緒に笑いあいながら寝室に入って、大石は着替え、俺はスーツをハンガーにかけてから台所に向かった。
作ってあったチキンライスをレンジに入れてあっためてる間に、俺は玉子をボールに割って溶いて、味付けしてから熱したフライパンに流しいれる。
じゅっ、といい音を立てて広がろうとした玉子を、手早く油と絡まるように箸で混ぜる。
ふわふわトロトロの状態のまま、柄を持つ手をトントンと叩きながら玉子をオムレツ状に巻いた。
それが出来上がるころに、レンジのチキンライスも温め終わり、形を整えて皿に乗せたそれの上にオムレツを乗せる。
もう一つも同じように作ってテーブルに並べてると、着替え終わった大石がダイニングに来た。
「今日はオムライス?」
「うん。引っ越して初めての夕飯だし。やっぱ一番得意な玉子料理かな、って思って」
「英二の料理はなんでもうまいからな」
「そ?」
俺がサラダを冷蔵庫から出してると、大石がスプーンとかフォークを用意してくれたから、あんまり待たせず準備が終わった。
大石がイスに座ったのを見計らって、俺は小型ナイフをもってくる。
「ちょっと待ってね」
そういってオムレツの真ん中に切れ目を入れると、そこから広がるように玉子がチキンライスを覆った。
「ぅわっ、すごい!」
大石は子供みたいに、手を叩いて喜んでくれた。
俺は得意になって自分の分も同じように切り、その上からケチャップをかけた。
「ほいじゃ、どうぞ」
「いただきます」
手を合わせてからスプーンで一口すくい、ばくっと食いついた。
「…どう?」
もぐもぐと味わう大石にそっと聞くと、何度も頷きながらもう一口食べて、また味わってる。
ごくんと喉に流し込んでから、大石は俺に目を向けた。
「うまいよ。今日のはまた格別だな」
「ホント?」
「ああ。これからいつでもこんなうまい料理が食べられるかと思うと、本当に幸せだよ」
歯が浮くようなそんな台詞も、幸せいっぱいな俺には嬉しくって仕方ない。