妄想爆走族
□若頭×組長
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大石は先代の仏壇の前で手を合わせ、「め」の字を背にしょった法被に腕を通した。
懐に拳銃を仕込み、深く息を吐く。
大石は単身で浜口組に乗り込む覚悟をつけていた。
たった一人残してしまう形になった英二には、堅気に戻って欲しいという手紙を置いて立ち上がる。
勝手にこちら側に引っ張り込んでしまったことを詫び、一人で強く生きて欲しいとも願っている。
ただ、自分たちのことを忘れないでくれとは書けなかった。
できるならば覚えていて欲しいが、英二のためには忘れてしまった方がいいのかもしれないとも思ったからだ。
部屋のドアを開けると、そこには英二が立っていた。
「組長…」
「やっぱ、一人で行くんだ」
大石は何も言わない。
だが、英二はそれが返事だと悟る。
「行くなっていっても、行くんだよな」
「…はい」
「俺の命令でも?」
「……はい」
まっすぐに英二の目を見て、大石は力強く答える。
英二はその大きな目に大粒の涙を浮かべ、大石の胸に縋りついた。
「俺も…俺も、一緒に行く!」
「それはできません」
「なんでだよっ!」
「組長のお命をお守りすることが、私の使命だからです」
「でもっ!……大石までいなくなったら、俺、俺、一人ぼっちじゃんっ!!」
悲痛な叫びに、大石は目を瞑った。
「一人ぼっちにされるくらいなら、大石と一緒に行きたい。大石と一緒がいいっ」
「組長…」
「一人は、いやだよ…」
大石が身につけている法被の胸に、涙のシミが広がった。