新作構想ハイライト集

□フルメタルパニック
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前方からの激しい射撃

テーブルであつらえた即席のバリケードは玩具のように吹き飛んでいく



「ったく!冗談じゃねぇぞ!?」


バリケードを背にクルツは苛立たしげに呟く


客船パシフィッククリサリスの狭い廊下での後退防御のおかげて

何とかクルツ達はその場を耐えていた



だが、状況はキツかった



相手は小型のアームスレイブだ


頑強さ

俊敏さ

そして携帯した火器の馬鹿げた威力




これらを複数相手にしてまだ生き延びている事は

クルツ達が精鋭中の精鋭である証明に他ならない



だが、その証明などこの一方的な攻撃には意味を持たない


結局は時間稼ぎに過ぎない


「おい!フミの奴はまだなのかよッ!!もうもたねえぞッ!!」


通信機に悪態を付きながらクルツは射撃の動きを止めない



チュイン


銃弾が一体のアストラルの間接に当たり
機動が若干鈍くなる



が、こんな時間稼ぎが精一杯


そもそも、こんな馬鹿気た
コンパクトサイズのアームスレイブと戦闘する予定など微塵もなかった


よって装備は最小限

人間を相手に戦う武装だ


だから、できる事は時間稼ぎ



この不条理な現実に対抗出来る


馬鹿げた存在がやってくるのを待つしかない




「大体何で聖夜にドンパチやらなきゃいけねぇんだよ!っと!」



バリケードから身を乗り出し
クルツは手榴弾を投げる


船の損傷とか気にしていられない

沈没さえしなければOK



カッ!!!




爆風と閃光


熱風がバリケードを吹き飛ばさん勢いで吹き荒れる



「どうだ、これならあのロボ共も……」


未だ舞い上がる粉塵


それをもお構い無しにクルツは敵の存命を確かめる



そしてクルツは思った



確かめない方が良かった



無傷ではないにせよ



アストラル達は其処に立っていた




クルツの脳内で情報が交錯する



此処から撤退するか?


それともまだ粘ってみるか?











「逃げるに決まってんだろ!!」


クルツは姿勢を低くしたまま
走り出そうとして




動きを止める




アストラル達はセンサーで標的が立ち止まった事を認識する


学生ならばこの機械達は容姿を確かめるまで殺しはしないだろう


だが、クルツは設定されていた捕獲すべき人物と何の合致点がなかった



故に



アストラル達は無防備にも背中を見せ、動きを止めた標的を消去しようと


重火器を内蔵した腕を向ける




クルツは逃げない


ただ



呆れた風に口を開く



「あのな〜……。
お前どっかで美味しい所を持っていこうと潜んでたんじゃねぇだろうな?」



アストラル達は一定の人語を解する


だからこそ


この標的が何を喋っているのか理解できなかった


出来なかったし


理解する必要もないと機械の脳は判断した



ソレが間違いだとも気付かずに




ガァン!!!
ガァン!!!
ガァン!!!
ガァン!!!
ガァン!!!


標的の前方からマズルフラッシュを確認


アストラル達は攻撃をキャンセルして回避すべきか思考する


ほんの一瞬の思考


結果、アストラルは攻撃を続行する事にした


ただの対人兵器では
自分達を即座に無力化は出来ないと判断したからだ




これも間違い




その二つの間違いの代償として




アストラル達は標的であるクルツを抹消するよりも早く


自分の機能が停止する事になる




クルツと擦れ違い

5発の銃弾は寸分違わず


五体のアストラルのセンサー目掛けて直進




そして、元からその銃弾の居るべき場所は其処だと云わんばかりに


寸分違わず撃ち込まれた
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