新作構想ハイライト集

□Fate/stay night
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令呪は確かに発動した


した筈だった



なのに



この馬鹿は


まだ私の前に居る


まだ私の傍に居る



「馬鹿ッ!!!
何でアンタは私の言う事聞かないのよッ!!!
アンタは他のサーヴァントと違うの!!死んだら元の世界にも返れずにそれまでっていうの解ってるでしょ!!
令呪に無理矢理逆らって自殺するつもりなのッ!!!」





叫ぶ凛の声は僅かに涙で掠れている



フミはボロボロに傷付いた

幼い小さな体で凛の前に



英雄王ギルガメッシュの前に立つ


フミはからかい口調で

「あれ〜?魔術師には涙は不要じゃなかったっけ?」


言葉こそ余裕があるが


フミの体の至る所には風穴が開けられ
おびただしい血が足元に溢れていた


いわずものがな



【王の財宝】によって

射抜かれたあらに他ならない




そして

この場から全力で凛を置いて逃げろという内容の令呪の支配に逆らい


体の間接は軋み

反発による激痛が身体を襲っている


にも、関わらず


目の前の馬鹿は立っている

まだ、傍にいてくれようとしている

「なに虚勢を張ってるのよッ!!!
何で私をそんなになってまで庇うのよッ!!!
主従関係なんて面倒なんでしょッ!!!?」




凛の叫びが再び木霊する



ギルガメッシュはククと笑いを漏らしながら


「そこな雌の雑種の言う通りだ。
我に恐れを抱き背中を向けて走り逃げるがいい。
きっと分相応な滑稽な姿で我としては笑えるぞ」



ギルガメッシュの侮蔑とも取れる言葉に


フミは笑う


笑う

「ぷっ……ははは、くっくあははははは」

馬鹿馬鹿しそうに


「何が可笑しい?」


苛立ったギルガメッシュにフミは笑って出た涙を手で拭いながら


「あ〜いや、ちょっと凛を置いて逃げる自分の姿を想像したらダサ過ぎて笑えてね……確かにその選択は非常に楽でいいんだけどさ」



「………」



フミの言葉にギルガメッシュは無言で睨みつける


フミはそれも意に介さず

「その選択はないね、ダサ過ぎだし……何より、俺は凛を護ると誓ったんでね」



「はっ…誓いだと?
下らん、雑種風情が何に誓いを立てたというのだ?」




スッとフミは血だらけの胸に


己の手を当てる


「自分の魂にと…。
今は居ない…もう一人の凛に…」



そしてフミは四肢に力を込める



ガタガタと膝が笑った


ボタボタと血が大理石の床を濡らす



「…だからッ!!!!」



ビシッ


ビシッ



フミの体が火花を散らす



令呪の縛鎖を引き千切ろうとするフミの魔力と


拘束し、命令を実行しようとする魔力がぶつかり合う




ピシッ…




何か亀裂が走るような音が木霊す




世界が漆黒に染め上げられる


正確には


フミの体が


そして白い亀裂が漆黒の闇に飲まれたフミを覆う



パキ…パキパキ…



罅割れるように漆黒の繭が剥がれ落ちる




ドンッ!!!!!



刹那、閃光が部屋を満たす



眩い極光が世界を満たす




極光が収まり




凛とギルガメッシュの視界に再び元の世界が帰ってくる



だが、相違点が一つ



先ほどまで


血だらけで令呪に、運命に反逆していた幼いフミの姿が其処にはなかった








正確には変貌していた




しなやかに伸びた四肢


鮮血のような紅の髪


夕日のような赤銅色の瞳


真紅のラインが刻まれた
漆黒の外套を羽織った男が立っていた
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