新作構想ハイライト集

□リリカルなのは
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その激情を前にしても



黒翼の少女の顔には表情は浮かばない


依然、涙を流したまま



ソッと掌を前に差し出し


『闇の書』を前方に浮遊させる



少女の周囲に淀む薄暗い魔力がその勢いを増す



「お前も…我が内に眠るといい」



「ハァァァァァァッ!!!!!」


裂帛の叫びをあげてフェイトはヴァルディシュを振りかぶる



目にも止まらぬ高速移動からの一撃



普通は反応すらとれずに一撃を叩き込まれてもおかしくはない


だが




それも、意味は為さない



『闇の書』のシンボルの刻まれた魔術障壁



それもたったの一枚に防がれる


「ッ!!!」


その事実にフェイトは歯を噛み鳴らす



…届かない


これでは駄目だ


武装解除させようにも、はいそうですか、とすんなりと言う事を聞いてくれはしない


だから武装解除するに足るだけの状況を作るために攻撃を仕掛けたが



届かない



威力は抑えていた



目標の破壊ではなく対話と武装解除が自分達の目的


だが速度に関しては加減したつもりはなかった


にも関わらず、目の前の黒翼の少女は眉一つ動かさずソレを障壁一枚でやすやすと止めてみせた



焦燥がフェイトを襲った最中



光が舞った



金色の光が



フェイトの周囲を舞う




それが何か



今何が自分の身に起きているか理解する間も無く


「…あ」



脱力し


ゆっくりと落下をし始めるフェイトの姿が



光の粒子になって




消える







「フェイトちゃんッ!!!!?」


なのはの叫びを余所に



『闇の書』は言霊を紡ぐ

  吸収
『Absorption』



言霊を呟き終わると


広げられたページが勢い良く閉じられる



「全ては、やすらかな、眠りの内に…」


そっと涙を流しながら目を閉じる黒翼の少女





その様に

なのはは言葉を失う



だが、すぐに我を取り戻し後方で此方の状況を常に確認しているエイミへと繋ぐ



「エイミさんッ!!!」



『状況確認ッ!!フェイトちゃんのバイタルまだ健在!!
闇の書の内部空間に閉じ込められたの!?
助ける方法現在検討中ッ!!!』


念話によってもたらされた情報が最悪のものでなかった事に


なのはは少しばかり安堵する



「我が主もあの子も…醒める事ない眠りの内に……終わり無き夢を見る。
生と死の狭間の夢……それは永遠だ」




淡々と述べられる黒翼の少女の言葉に




なのはは俯いたまま応える



「永遠なんて、ないよ」


静かに



激情にかられた訳ではない



とつとつと思いをそのまま口にする




「皆、変わっていく………変わっていかなきゃ、いけないんだ!私も……」


静かに



そして力強く



そして俯いていた顔を上げる



まっすぐ


黒翼の少女を見つめ言葉を口にする




「貴方もッ!!」



灯のついた瞳



不屈の意思がそこにあった




凛とした言葉に世界は揺れる




幼い少女の言葉に


「…………」

やはり黒翼の少女は反応しない





「なかなか深い台詞だよな〜」



場の空気を壊す



酷く



そう、酷く間の抜けた言葉が響く




猫が居た





紅い癖毛を揺らしながら



鍵尻尾をフリフリと振りながら




いつの間にか猫は、なのはの頭の上に鎮座していた


「!」

黒翼の少女にやっと表情らしい


表情が浮かぶ





ソレは驚愕



当然だ




音も無く



気配も無く




幾重も張り巡らされた探知結界をすり抜けて





この珍妙な猫は突如出現した





「ふ、風壬君!?」




「よ」

前脚でペシっとなのはの額を叩き



風壬と呼ばれた珍妙な猫は返答する



「あのさぁ〜俺が復帰するまで派手に動くなつったのに……フェイトの奴何処さ?」


「それは……風壬君が遅いから、じゃなくてフェイトちゃんは…今、闇の書さんの中……」


なのはの言葉に猫は首を傾げながら黒翼の少女を見やる



「遅いもなにもなぁ〜!!
スターライトブレーカをほぼゼロ距離で直撃したらそうなるだろッ!!!?
つーかさ!空間転移した直後にアレはないだろッ!!!?
完全にあれって管理局のミスだよね!!?
転移完了直後の視界一杯に広がるスターライトブレイカーって!!!?」


「ふ、風壬君!!痛い痛いよ!!?
爪たてちゃ駄目だって!!!」



ふしゃー!!!と


なのはの小さい頭の上で暴れる猫



数分前


『闇の書』が、なのはからコピーしたスタライトブレイカーをぶっ放した瞬間



運悪く


間も悪く


この猫は転移された



それも、スターライトブレイカーから逃れるために移動したなのは達の初期位置



つまりは、黒翼の少女のまん前に



そして吹き飛ばされながら猫は途切れ途切れの念話をなのは達に飛ばしていた




内容は簡潔




非常にシンプル




『ふざけんな!!!あと俺が復帰するまで無茶すん……ギャーッ!!!!!!!』




馬鹿である





というかよくもまぁ

ゼロ距離のスターライトブレイカーの直撃を受けて無事だったなと感心する他無い
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