新作構想ハイライト集

□リリカルなのは
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ひとしきり暴れた後で


猫は少しばかりマジメな表情で呟く
(猫のマジメな表情というのがどいうものかは解らないが)




「で、マジメ路線に戻るけど……なるほど。
取り込まれた、か」




「あの子は我の中で永遠の安らぎを享受する……深い深い闇の底で幸せな夢を描きながら貴方達もすぐに…同じ場所に」



その言葉に猫は尻尾を左右にふいふいと動かす




「お?無口キャラっぽかったけど普通に喋ってくれたな……」



小馬鹿にした台詞に黒翼の少女は僅かに眉をひそめる




「…どういう、こと?」


「まんまの意味っていうのと……もう一つ。
なにか饒舌になるような…不確定要素でも出現したかい?」



その言葉が意味することは


幼いなのはにも理解出来た



饒舌に為らざる得ない不確定要素




それは自分の頭上で尻尾を左右にリズミカルに揺らす猫、だと




猫は不敵に微笑む
(猫の不敵な笑みがどのようなものか想像がつかないが…多分、敵からすれば相当憎らしいだろう)




そして、猫はなのはに小さく呟く



「フェイトの生存は確認されてるんだよな?」


「う、うん」



「そうか、なら…フェイト次第だな。
俺も似たような結界に取り込まれたことがある……。
あれは居心地が良くて仕方ないが…あいつはあれで芯が強い…なんとかなるだろ」




その言葉が聞こえたかは定かではないが

黒翼の少女は口を開く


「無駄だ、この眠りには抗えない…それが、悲しみを知るものならばなおさら。
貴方もどうですか?」




それに猫は口を開く


「あ〜たしかにアレはトラウマ持ちの奴にゃ気持ちいいわな。
俺も出来ればご相伴に預かりたいけど……遠慮しとくわ。
……其処は居心地が良すぎて、ふやけちまう。
たまには、そう…だな。
うざったい奴等に囲まれて馬鹿やる方がそれなりに楽しくて有意義だ」





その言葉に黒翼の少女は複雑な表情を見せる



それは、その言葉を放った存在を



羨むような

憎むような



「それが、答えですか紅毛の猫……それで、どうしますか?
そこの少女同様に、私を止めるなどと嘯きますか?
それが出来ますか?使い魔風情の貴方が」



「それが答えだよ、黒翼の少女…。
あんたを止める、そう嘯かせて貰うよ。
出来ますか?使い魔風情?
解ってるだろ?俺が使い魔でも、唯の可愛い猫でもないという事も。
ついでに……猫なめんな」


誰も可愛い猫だなんて一言も言ってない



なんてツッコミは入れる奴はこの場にいない




「幸か不幸か、この場にはあんたによって、相当な魔力の力場が形成されてる…。
この忌々しい姿とも限定付だがおさらばできる…悪いが喰わせてもらったよ」



バチッ



「わひゃ!?」


突然の頭上の火花になのはは態勢を崩す



クルリと回転して猫は中空に降り立つ




「質はどろどろしてて微妙だったけど量は充分……今の姿じゃ足止めも出来ないけど」



バチバチッ



赤銅色の猫の瞳が漆黒に徐々に変貌する




「さて、これならどうかなぁ?」




激しい光が猫を中心に巻き起こり


魔力の波が

黒翼の少女

なのはの髪を揺らす



ズンッ!!!!!!




結界内を轟音が響き渡り…



ゴゥッ!!!!!!!

豪風が砂塵を巻き上げ



その中に消えた猫の姿が徐々に明らかになる



そこには


はねっかえりだらけの紅い癖毛


半分は閉じられた眠そうな赤銅色の瞳


そして……




すらりと伸びて






……いない、四肢



「…………」



不敵な笑みを浮かべて出現したのは



せいぜい


なのはよりも少しばかり大きいサイズの少年




だが、その不敵な表情が徐々に崩れてゆく




「えー……っと、あれ?
なんか……あれ?なんで?あれーッ!!!!?



少年は何度も何度も自分の姿を確認する



紅と漆黒の外套を纏った少年



大きくみても12歳程度




「なんで!?
なんで微妙にちっさいのッ!!!!?
かっこわるッ!!?
それっぽく封印解除したのに想像より4割小さくてかっこわるッ!!!?
…………うっわ〜テンション下がるわ。
術式構築にミスある訳ないし単純に出力が不足してた?
これでもまだ全開じゃないってどうよ…もうなんか丸投げして帰宅して〜」




気の抜けた台詞を並べ立てる馬鹿


こんなけ緊張感のない事をすると馬鹿に見える



いや、実際に馬鹿なんだろうが


丸投げして帰宅したいとかお前は何をしにきたんだと問いたい



だが、そんな馬鹿一名に対して



黒翼の少女

高町 なのは




両名の反応は違ったものだった



二人はその存在に目を見張る


二人はその言葉に耳を疑う



何故か



理由は簡単



その幼い姿からは
想像もできないような魔力反応


その性質は不可解極まりない



その性質は光でもあり闇でもあり


入り混じっているものの


澄み渡っており混濁したり淀んだ気配は全くない




そして、その言葉



この少年の言葉を真とするならば



この少年はまだまだ全開ではないという



言葉のニュアンスから半分も力を解放できていないようだ





「あ、あの?風壬君?だよ、ね?」



おずおずと背後のなのはが声をかける



それに少年は気だるそうに振り返る



「あ〜ほら前から言ってたじゃん。
猫は仮の姿って……まぁ今が本当の姿って訳でもないんだけど…」


そう言いながら斜に構えたまま


風壬は斜め上の中空で静止する黒翼の少女を見やり



深く溜息をつく



「クリムナル…面倒だけどいくぞ」


そう言ってチョーカーに手をやる

紅玉が煌き


マスターに返答をする


 命令すんな馬鹿
『Reihenfolge... ist dumm』



そのキツイ反応に風壬は汗を流す



「いや、造物主……マスターに対してそれは無いと思うんだぁ〜どうなのよそのへん」

 知るか
『Wissen Sie 』


ぼやき、罵られながらデバイスを起動



漆黒の光を放ち


チョーカについた紅玉を核に無骨な大剣が為される



「……はぁ、ほんと締まらない、決らない、かっこ悪いの三拍子。
…けど、まぁ準備はできた…………待たせて悪いな黒翼の少女、此方の不手際でな全力で相手ができないけど…始めようか。
……めんどいけど、さ」







そう言い放った






こんてぃにゅー?
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