とある馬鹿の御伽噺







魔術


科学



正反対ともとれる学問、分野




それらが交わる世界があった




正確に言うならば



魔術と科学は

それぞれ住み分けをしていた


表向きはしっかりと


だが、裏側は入り混じりドロドロの様相を呈していた



その混沌の渦中に存在する場所の名を




学園都市




ありとあらゆる学問、専攻分野の学校、研究所がひしめき合う都市



それは外部との接触を極力断ち

独自の生態系

独自の世界観

独自の先進技術


それらを獲得するに至っていた



都市外部からすれば
オーバーテクノロジーと称してもよいレベルの技術力が可能にした中でも

歪な存在を一つ挙げるとするならば


それは【能力者】の開発



読んで字の如く



超常現象を能力とする人間の開発である




そんな常識はずれな事が常識となった小さな閉じられた世界



その異質さを解する者はごく少数



さらにその異質さの根幹、原因を知っている者など更に少ない



仮にその原因、理由を知ったなら


大多数の人間がなるほどと納得するだろう




なんてことはない




その魔法じみた科学が満ちた都市を

ソレを造り上げた存在が




単純に明快に



その世界で存在そのものが災厄にして最悪とされる


稀代の魔術師というだけのこと



ならば理解できよう


この都市の歪さを


ならば感じられよう


この都市の闇の深さを






風壬は





その学園都市の闇の製造者と相対していた



薄暗がりの広い部屋



無機質きわまる部屋の中央に主張するように存在するは


巨大な培養ケースのような機材


そのケースの内部


謎の液体の中で、ソレは逆さまになったまま収まっていた


ソレの外見は異質


異質な培養液に浸っているからではなくその姿が異質



ソレは

男にも女にも

子供にも老人にも

聖人にも囚人にも見える




ソレに風壬は語りかける



「ふーん、此処はそういう世界ね」


目の前の異質を極めた存在を前に


眠そうに

面倒そうに

ファミレスで注文した品を待つ間

暇潰しにお品書きを端から端まで読むような調子で言葉を続ける




「あー、せっかく色々教えて貰ってなんだけど。
そのお誘いはNOだ」



「ほう」


風壬の返答にソレは拒絶されたにも関わらず興味深そうな声をあげる



その反応に大した反応も見せずに風壬は欠伸を噛み殺しながら言う



「お前のプラン…【神浄】に至る?だっけか。
まず、第一に興味がない。
第二に漠然とだけど、そのプランは俺の目的とかけ離れている。
第三に、まぁ…俺が協力を確約したわけでもないから仕方ないけど。
そのプランには喋っていない事柄、裏があり過ぎる」





「ふむ」





「第四、コレが最大にして一番の理由っつーか。
出会って数分であれだけどさ〜」



そう言い風壬は眠そうに目を擦りながら手をヒラヒラと振る





「俺は、お前が気に食わない」




その所作は隙だらけ



その言葉はだらけきったもの






だというのに








ピシッ






空気が罅割れる



現実にはそんなことはおこっていない



そう錯覚するような何かが風壬を中心に膨れ上がった





普通に生活する上で

まず、体感することはないモノ





ソレは殺気




ソレも純度の極めて高い


ただ敵意を昇華し


ソレだけで一般人、ある程度の使い手ならば


ソレに当てられただけで射竦められ気を失いかねないレベルのモノ



が、それはすぐさま霧散するように消える



「あほらし」


言葉通り呆れた風に言い

風壬は肩を竦める



「気に入らないだけで人外相手になんかしてらんないっての」



ソレは風壬の言葉に

ふむ、と頷くように声を漏らす


「いいのかね?
コレは滅多にないチャンスだと思うのだが」


人外と称されても
さして気に障った風でもなくソレは言う


それに風壬は癖毛を片手でかき回しながら面倒そうに口を開く


「好機といえばそうなんだろうけど。
お前の目的は現段階で不明瞭だし。
情報に戸籍、寝床にと便宜はかってもらったわけだし。
現状では恩はあれどその逆はないし」



「なに、私の方も君を此処に留めることにメリットは存在する」


「知ってるよ、詳細まではわからんけども…」



そう言い、会話はコレまでとばかりに風壬はソレに背を向ける



コツコツコツ


歩く音と培養液のブクブクという音だけが部屋に静かに響く



暗がりに


姿を半分消しながら風壬の声が響く




「なんにせよ。
俺はいつものように、俺のやりたいようにやるだけだ」



そうして風壬は完全に其処から消える





それと同時に


培養液の脇の柱から


金髪にアロハシャツを羽織り、サングラスをかけた青年が姿を見せる


軽薄な姿とは裏腹にその色眼鏡越しの視線は鋭い



「いいのか、アレイスター?」


アレイスターと呼ばれたソレは青年の問いに僅かに首をひねる


「なにか問題でもあったかな?」



「問題?問題だらけだろう。
アレが一体どういった存在なのか解らないお前じゃないだろう」


青年の非難めいた台詞に気を悪くした風もなく…


「別世界からの来訪者、特異固体にして特異点、因果律の外の存在。
願ったり叶ったりではないか、これでプランの大幅な短縮ができる」



「そうじゃない、アレはお前の天敵、絶望と災厄と悪意の、な…。
あの手の存在が簡単にプランにのってくれるとでも思っているのか?」


相変わらずの非難めいた口調にソレは平坦な調子で答える


「理解しているさ。
そして、その容易さも。
確かに、現段階では私のプランに彼はのってくれないだろう。
だが、問題ない」


「なに?」



「そうだな、少しすれば…彼にもこの都市で友人といったものができるだろう」



唐突に何を言い出すのだ

そういう思考の青年をよそにソレは言葉を続ける



「ともすれば恋心を抱く者ができるかもしれない」



「…おい、まさか」


青年の表情の険しさが増す

ソレは言葉を続ける


「恐らく、失いがたい何かができるだろう。
交渉材料は順次増えていく予定だよ、そのどれもがジョーカーに成り得る。
これほど御しやすい人種もそういまい。
チープな手段ではあるが、効果は絶大だ」


淡々と

平坦に


ソレは述べる


出来た知人を

出来た友人を

出来た恋人を


大切な存在を盾にすると公言するソレに



青年は吐き気を催す程の憤りを感じる


青年は怒りを抑えるように静かに息を吐き


風壬と同じようにソレに背を向け歩き出す



そして、去り際に言う



「確かに、アレはそういった人種だ。
だが、後悔するなよアレイスター。
その手段はトリガーだ……お前の世界を、くだらない幻想を崩壊させるとびっきりのな」




言葉を残し、青年は去った




そして、部屋にはソレだけが残される



そして、ソレは言う

自嘲するように



「私の世界?幻想?」


それは初めてソレが見せた感情の篭ったらしい言葉


「おかしなことを言う。
そんなものとうの昔に壊れているというのに」


ソレはそういった壊れている、と



魔術と科学…

馬鹿が交差するとき

新たな御伽噺が始まる




みたいな具合です


簡易人物評価

登場人物(少数ですが)の初期の馬鹿へ&馬鹿の評価です



・上条当麻→馬鹿なヤツだよな
風壬から→お前が言うなし

・インデックス→貴重で上質な食料源なんだよ
風壬から→おい、保護者!ペットに首輪つけとけ!

・ステイル→色々と規格外過ぎて頭が痛いね
風壬から→まぁ、これが普通の魔術師の対応だわな

・神裂火織→不思議な…もとい変な方です
風壬から→斬新なファッションだよなぁ、いや魔術的意味があんのは知ってるけど…それにしてもって意味で

・御坂美琴→逃げるな!避けるな!なんで電撃が当たんないのよ〜ッ!?
風壬から→いやいやいや当たったら失神じゃすまないでしょソレ!?

・一方通行→コロス…
風壬から→ベクトル操作とか…ハハ、笑えない…(泣)


基本的に時系列ごとに話を追っていくことを考えると超電磁砲の最初辺りがスタートになります
その後は禁書目録の話と超電磁砲と絡めて進行といった具合です

[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ