「碇、この少年は…」


薄暗い部屋で
初老の男性が用紙を片手に
デスクで両肘をつきサングラスをかけた男性に詰め寄る


男は


碇と呼ばれた男は初老の男の渡した用紙を一瞥して



「問題ない。
老人達の手のモノではない、どちらかといえば…我々よりの存在だ」


「………つまり」


「人類の補完など認めはしない…そういった点では我々と同胞という事になる」

言葉を継いだ碇の台詞に
初老の男は難しそうな表情で

「その言い草では…碇、お前の思惑とも志が違うという風に聞こえるが……よいのか?」



その言葉にしばし沈黙が降り

男は微かに口元を歪め

「かまわんさ、互いに…時が来るまで利用し合うだけだ。
我々は『機会』と『場所』を与え、彼は我々に『力』を貸してくれる」


「罠という可能性は?」

「ないな、コレはあの『芝村』の手の者だ」


その言葉に初老の男性は息を呑む


「まさか…今まで一切の動きを起こさなかった奴等が動く、か」


「それだけ、残された時間が僅かになったという事だ冬月。
死海文書に書かれた以外のシナリオが始まる」


「老人達が黙っていないぞ」


「なに、彼もそれに合わせて動くさ。
何も問題はない、そう何も」

















「暑い熱いアツイあついッ!!!」


紅髪の少年はリニアレールから降りるやいなや

外気とリニアレール内の温度差に軽くキレる

そしてシャツのボタンを上から4個ほど解き全力の手団扇で扇ぎだす

完全に人気のないホームだからといって行儀が悪いことには変わりない

「なんなんだよったく…この暑さはぁ〜!!!
そりゃ南極の氷も溶けるっつうのッ!!!!
って…あ〜叫んだせいで更に体感温度が上昇しやが、る」



己の愚行を呪いながら赤髪の少年は身を屈め床に置いていたつもりの
己の荷物をまとめてあるボストンバックを担ごうとして


スカスカ


「ん?」


ボストンバックが無いことに気づく


そしてハッと背後を


リニアレールの方に振り返り



プシュー



閉まっていく扉の向こうに

扱いなれた旅のお供の姿が…

色々と、主に警察方面の方々に見つかってはいけない物がギッシリと詰まったボストンバックが…


ガチャン


ピィー


汽笛を鳴らして出発しだすリニアレール


少年は遠い目をして

「……うん、まぁ…もう慣れてるからいいけどさぁ。
あれかな?あのリニアってば特急だから……。
この駅の次とかで止まったり……は、しないんだろうなぁ…。
しんどいなぁ……めんどいなぁ……」



物語序盤から大いにけつまづいた少年は乾いた笑いをあげる




リン




現状の暑さにそぐわない

涼やかな風に乗って


鈴の音が少年の耳に届く




少年は文字通り馬鹿みたいに笑うのを止めて


その鈴の音のした方向


反対側のホームに視線を向ける






リン





再び鈴の音




紅髪の少年の瞳に映るは


瓜二つの紅髪の一人の少女の存在


紅い癖毛を頭の両端で結び


太陽の光を吸い込む黒地のカクテルドレスを身に纏ったソレは


とても


とても

場違いな存在に感じられた



何が?


その瞳が

瞳の持つ冷たさが


こんな日常の中には居てはいけない


ありふれた世界には似つかわしくない


そう、少年の本能が告げていて…



不意に


不意に少女は口元を動かす



ゆっくりと


ゆっくりと


口の動きを読めと言わんばかりの遅さで…




プァーン!!!!!



汽笛を鳴らしながら向かいのホームをリニアレールガ通過する





リニアが通り過ぎ

其処には、向かいのホームには先ほど視界に居た筈の少女は何処にもいなかった



「………」



少年は無言で向かいのホームを



正確には少女の佇んでいた場所を顔をしかめて睨む










「………あなたが藤堂 風壬?」




今度は背後から声をかけられ


少年は違う意味で顔をしかめる



先ほどの少女の事に集中するあまり、己の背後をおろそかにしていた事に心中嘆息する



そして、驚きを相手に悟られぬように平静を装って振り返る


目の前に居たのは

透き通った水色の髪を持った少女

瞳は自分と似て非なる赤色


感情を余り移さない瞳に戸惑いながらも少年は声をだす

「ん?そだけど…。
えっと…あんた誰??」


「これ」


そう言って差し出された何かを手に取る


カードだった


NERV


紅いイチョウのマークをバックに

カードにはそう表記されていた




「なるほど、ね。
あんたがNERVからのお迎えって訳ね…。
…にしても俺とそう年齢の変わらない子供が来るとは…意外というか……ん?あれ?」


話し相手のリアクションがないことに違和感を感じ取り

カードから視線を上げて周囲を見渡す少年



すると、ホームの階段を下りて改札へと向かう少女の姿



まるで役目は果たした


もう俺には用はない、とその背中が語ってるようで



少年は嘆息する



これから

この世界でも厄介事が次々と起こるのだろう


嫌になる

ホントに嫌になる



少年は、再びカードと先ほどまで向かいのホームにいた筈の紅髪の少女の佇んでいた場所を見つめる



脳裏によぎるは少女の唇の動きを読んで伝えられた言葉




【あいたかった】




これが、普通のシチェで言われた事なら

男たるもの嬉しいのだろう



だが、少年は解っていた



これが、絶望の終焉を冠する物語の入り口なのだと














と、まぁ…こんな感じでございます。
新世紀エヴァンゲリオンのプロローグ的なものです

原作では凄まじく鬱&暗い展開が非常に多いエヴァですが……

多分、色々とぶち壊しになると思います。
ええ、そりゃもう派手に盛大に…ウチの馬鹿のせいで…(疲)

それが読者様達にどう受け止められるかは判断しかねます

ただ、原作よりかは明るく救える話になればと思います♪

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