小説
□光の目
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いくつもの目が俺を射抜く。
どれもこれも好奇心に満ちている。
名前と簡単な自己紹介。
もう何度も繰り返した。
この儀式のようなものをしくじれば、クラスに馴染むのは難しい。
俺の席は窓際の1番後ろ。
急きょ作ったように、はみ出ている席。
転校じたい急に決まったことだから、仕方ないのだけれど。
HRが終わり担任が出て行くと、何人かが集まってくる。
これもまた儀式の1つ。
「前の学校のこと聞かせて!」
「何か部活入ってた?」
個人情報聞いてどうするの?そんなこと聞いて楽しい?
笑顔はりつけて、優しいフリして。
あぁ、俺も同じ、つまんない奴。
「女の子みたいな名前だね」
人垣の後ろ、俺の前の席から聞こえた。
桂木 雪
未だ黒板に書かれたままの名前。
幾度となく冷やかされたせいで、慣れてしまった不愉快な名前だ。
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