短編
□月の傍の人
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「ツッキー、どーしたの?」
そう言うと、ツッキーはハッとしたように此方を向いた。
「……なんでもないけど」
ぶっきらぼうに言うツッキー。
でも、なんでもない、てことはない。
ツッキーは、無意識で日向を見ていた。
ツッキーは、日向のことが好きだ。
んーと…、LikeじゃなくてLoveの方。つまり、ツッキーは恋愛対象として日向を見てるってこと。
まあ、俺も日向のことは好きだ。
小さいけど元気な小動物みたいで可愛いと思う。
でも、俺は日向にもツッキーにも、誰にもこの気持ちは言わない。
世間的なこともあるし…、何より、ツッキーには頑張って貰いたい気持ちが強いから。
「かーげーやーまっ」
「っるさい」
……あ、また日向見てる。…うわ、機嫌悪っ。
まあ、そりゃそうか。
自分の想い人が、他の奴…しかも、ライバルにくっついてるんだし、そりゃ機嫌も悪くなる。
「………ムカつく」
ぼそりと聞こえる、地から響くような低い声。
「ツッキー、ボール、拾いに行くよ。ほら、日向の近くにある奴」
「………」
さりげなく誘導し、日向の側に行くツッキー。ボールを集めながら見守るとしよう。
「部活、終わるよ。ボール拾って」
「え!もう?」
しゅん…とする日向。ツッキーの目元がさっきより和らいでいる。
先程より少し元気のない日向は、ボールを渋々と言った様子で拾い始めた。
* * *
「………オイ、」
「何、王様?」
「テメーも、か」
「そうみたいだね」
クスリ、と笑って見せると、王様は眉を寄せる。
「アイツは、俺のだ」
「違う。今のは誰のものでもないよ。
ねえ、王様。
僕と勝負をしようよ」
月と影
(どこか似ている二人の争い)