短編

□獅郎さんの憂鬱
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* * * *



「おーくーむーらーくがあっ!!」



ガンっ!!と顔面にパンチが入る。

殴られた本人、志摩はその場に崩れ落ち、ゴロゴロと転がり出した。



「兄さんに近付かないで下さいませんか。間違えて撃ち殺したくないので」



ニコリと笑みを溢すが、目が恐ろしく笑っていない。
そんな息子を見て、獅郎はもう一人の息子に視線を移した。



「よ、っと」


「燐、やけに大量だな」


「今日は色々な奴が来てるからな!!沢山食ってもらうんだ」



へへ、と照れたような笑いをする燐に、そうか、と返事をし、白い格好の奇抜な男に視線を移す。



「奥村くんのエプロン姿!!萌えですね」



ニヤニヤと笑みを浮かべるメフィストに、獅郎の呆れた視線が突き刺さる。



「ちょ、酷いやん、奥村せんせ!!奥村くんと話そうとしただけやで!?ね、お義父さん」


「…………」


「うちの父を君に、お義父さんなどと言われる筋合いはないですが」


「いや、俺は将来奥村くんの旦那さんになる男やから」


「兄さんは僕のものですよ」



……青少年たちよ、言うがこの国で男同士の婚約は無理だ。ましてや雪男、お前はもっと無理だ。と心中でツッコミを入れるが、面倒になるので止めておく。



「なあなあ味見してくれ」


燐がズイと横からシチューが入った小皿が渡される。
それを受け取り、味見する間、横から燐が俺の顔を見ている。



「うまいぞ」


「良かった」



ホッとしたような表情の燐の頭を撫でてやると、子供扱いすんなっと燐が膨れた面をする。



「悪い悪い」



燐の機嫌が悪くならないよう、さっと手を引っ込めれば、わかればいいと言って視線を逸らした。



「父さん…、何兄さんの頭を撫でてるの?」


「流石に、お義父さんでも許されへんわあ」


「…………燐、お前、変なのに好かれ過ぎだ」


「? なあなあ、これも味見してくれ」





郎さんの憂鬱
(鈍感な息子につく虫、注意)


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