短編

□白銀の男。
1ページ/3ページ






* * * *





くるしい。

いきが、できない。


目の前の妖は、首をギリギリと絞めてくる。

意識も朦朧としてくるなか、夏目、と聞いたことのある低い声が耳に届いた。




* * * * *





「………ん…?」


ぱちり、と目を覚ますと視界に映るのは木貼りの天井。

ゆっくりと上体を起こすと、ぼろぼろの木の格子戸が映り、その奥に賽銭箱が見えた。


どうやら、どこかの神社に運ばれたらしい。



「…………誰が運んだんだ…?」


「む?夏目、起きたのか」


「……ニャンコ先生」



ぽてぽてと近付いてくるニャンコ先生。ニャンコ先生は夏目の側で座ると、


「首は大丈夫か?」


「え…、あ、大丈夫みたいだ。
ところでニャンコ先生。俺を運んだのは、ニャンコ先生か?」


「そうだが?」


「それで?それとも、あの大きな姿?」


「どれも不正解だな」



どれも不正解、とは。じゃあ何で運んだと言うのか。


「仕方ない。もう1つの姿を見せてやろう」


ニヤリと笑うと、夏目との距離をとり、ドロン!!と白煙を体に纏った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ