短編
□温めよう
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* * * * *
「うぅー…寒い…」
ぶるり、と体が震える。
季節は冬、天気は快晴だが、風が酷く冷たい。
そんな外の状況のなか、圭は寒そうに震えて帰って来たのである。
「おかえりー、圭…って、大丈夫か?」
「大丈夫じゃないです」
ふるふると震え続ける圭の冷たい手を引き、炬燵に入れさせると、因幡が圭を抱き込むようにして炬燵に入り込んだ。
「温かいかー」
「はい」
ぎゅっと薄い腹の前で手を組み、自分の方に引き寄せると、安心しきった様子の圭は、因幡にもたれ掛かる。
「圭の髪ー」
「わっ…!」
漆黒の綺麗な髪に鼻を埋めると、シャンプーの香りが漂い、頬を緩めた。
大好きな大好きな圭の匂い。
「因幡さん…?いつもみたいに、しないんですね」
「んー?ああ、髪を楽しむのもいいけど、やっぱり圭の温もりとか匂いとか、圭全体を感じないとなって思ってよ」
因幡さんは、抱き締める力を強め、首に顔を埋めた。
「圭、」
「な、んですか」
「耳真っ赤だ」
ちゅ、と嬉しそうに笑いながら耳にくちづける因幡さん。
「圭」
「は、はい」
「温かいな?」
「はい」
冬のひととき
(これなら寒くないでしょう?)