short story
□パステルブルー
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〈 パステルブルー 〉
「海行こ。」
夏になると、君はしょっちゅうその言葉を発する。
「うん、いいよ。」
まあ僕も、海は好きだ。
綺麗な気持ちになれる。
「ほらー、キラキラしてる。」
君がこっちを向いて笑った。
僕には君の方がキラキラして見える。
夕日が沈む水平線。
心地よい風が、頬を切る。
夕日に照らされて、君の頬に光が映る。
君と僕は砂浜を歩いていた。
「…なんで、そんな顔すんの?」
気付けば、君が不思議そうな目でこちらをみていた。
パステルブルーのワンピースを揺らせて。
「なんでもないよ。」
君が綺麗だったなんて、言えないよ。
「んー、ふふ。」
「なに?」
「綺麗な顔してるなって。見惚れてた。」
そう言って笑った君から、数秒目が離せなかった。
言葉では言い表せないほど綺麗で、見惚れた。
「……見惚れてんなー、おいおいー」
肩を突っつかれた。
「やめろってくすぐったい。」
「……あはは。」
ふんわりそう笑う君は、本当に綺麗だ。
何回言っても足りないぐらい、綺麗だ。
「………幸せだよ。」
小声で言った。
「んー?なんてー?」
「なんもないよ。」
言葉にしなくても、伝わっているはずだろうから。