short story

□あんたという人
1ページ/1ページ

〈 あんたという人 〉



「うわ、髪の毛切ったの?」




「うわってなにさ。」


あんたの彼女になんてこと言うんだこいつは。


「いや、なんかすげーばっさり切ったなあって思って。」

「似合ってるの一言も言わないわけ?」

「衝撃だったからね。」

「なにそれ。ひど。」


あんたが前に「ショートカットって可愛いよな。」って言ってたから、切ったのに。

今思えばあんなの変態発言だ。




「なぁ。」


拗ねて、寝室のベッドの上で布団を被っていたら、あの人の声が突然聞こえた。

でも、私は寝てるふりをする。


「聞こえてんだろ。なぁって。」


布団をポンポン叩いてくる。

それでも私は知らない。


「良い加減にしろ。」


彼は力任せに私が被っていた布団を剥がした。


「…いつまで拗ねてんだよ。」


私はベッドの上で座って顔は横に逸らす。

彼は私の前で屈んでいる。


「…」


彼は小さくため息をついて、私の顔を両手で挟んで正面に向かせた。


「…さっきは悪かった。」


そういって、目線を逸らし、また私を見た。


「でも、お前がいないと俺はなにも出来ないから、拗ねるのはもうやめてくれ。」


彼の目は真っ直ぐ私を見ていた。

うわ、無駄にイケメン。


「…な?」


滅多に聞かない優しい声で言われる。

この声を反則と思ってしまうのは、この人に惚れた罪なのだろう。


「バーカ。」


そう言って彼の肩に頭を乗っけた。


「よく似合ってる。」


彼は私の髪を撫でてきた。

なんか、転がされているような気もするが。


「当たり前だバカ。」


私が言うと、彼はふっと笑った。


「どんなお前だって俺が好きなお前だもんな。」


こんなことをサラッと言える、この人の度胸が私には分からない。


「…どうしたの急に。」

「似合うだろ。」


俺がこういうこと言うの。って


「それなりに。」

「ほら、ドキドキすんだろ。」


この人のこういう若干Sなところが大嫌いだ。


「はいはい、しましたしました。」

「…適当だな。」


まあ、嬉しかったし、いっか。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ