short story
□warm
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〈 手 〉
新しい命が産まれることは神秘的だ。
それは世界中、いや、宇宙のどこででもきっと同じである。
「うー」
俺はあの時を今でも覚えている。
小学三年の時だった。
あの小さい手を初めて握った時、僕は命の温かさをじんわりと深く感じたのだった。
「今日からお兄ちゃんね。」
母親がそう言って笑っていた。
それを見て、もう一度小さい手を握った。
「あうーうー」
ふと見ると、つぶらな大きい瞳は僕のことを見つめていた。
「あ…」
その瞳を見ていたら、また命を感じた。
「あうあー…うーっ」
その時、僕の『弟』は初めて笑った。
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