short story
□My Valentine's Day
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〈 My Valentine's Day 〉
二月十四日。
「あのっ!」
昼休みが終わってすぐ、人の少ないうちにアップルパイを買いに行こうと廊下を歩いていたら後ろから声がした。
「ん?」
振り返ると、一人の女の子が赤い小さな箱を俺の目の前へ差し出していた。
顔は少し俯いていて分からない。
「…俺に?」
その子は俯いたまま。
蝶ネクタイが赤色だからきっと一年生だ。
「えっと……ごめん、顔あげてくれないかな?」
一体誰なんだ。
俺が顔を覗こうとしたら、急に彼女は伏せていた顔を上げた。
「っす、好きですっ…」
彼女は絞り出すように小さな声で真っ赤になりながらそう言った。
「………え…?」
彼女の顔を俺は見たことが無かった。
いや、どこかで会っているのかもしれない。
バレーの試合か?分からない。
どうしても、思い出せなかった。
「……あ、あのっ、去年の文化祭で、会った日から、ずっと、好きでしたっ!」
去年の?文化祭?
思い出してみたが、この子の顔は出てこない。
どうしよう…
「…気持ちは、嬉しいんだけど……」
「本当ですか!?…じゃあ!名前教えてください!」
…………う、うん?
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